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なぜ多くの個人投資家は「塩漬け株」を作ってしまうのか?バイ・アンド・ホールドは危険?

トウシル / 2018年10月22日 7時0分

なぜ多くの個人投資家は「塩漬け株」を作ってしまうのか?バイ・アンド・ホールドは危険?

なぜ多くの個人投資家は「塩漬け株」を作ってしまうのか?バイ・アンド・ホールドは危険?

 個人投資家が大きな失敗をする原因として、「塩漬け株」を抱えてしまうことがあります。
逆にいえば、「塩漬け株」を作らないようにすれば大きな失敗の多くは避けられるのですが、そもそも、なぜ個人投資家が「塩漬け株」を作ってしまうのかを探ってみたいと思います。

「塩漬け株」が生まれる4つのメカニズムとは?

「塩漬け株」の発生メカニズムはおおむね次のような流れでしょう。

  1. 「将来の株価値上がり」を期待して株を買う
  2. 意に反して買った株の株価が下がる
  3. それでも「持ち続けていれば上がるはず」と我慢して持ち続ける
  4. その結果、さらに持ち株の株価が下がり、手も足も出なくなる

 1から4の中で、1と3が主観に基づく行動です。このうち、1の行動は特段問題ありません。というより、「株を買う」という行動がなければ株式投資は始まりませんから、至極当然の行動です(買うタイミングに問題があった可能性はありますが、その点については別の機会でお話しします)。

 問題なのは、3の行動です。株価が下がったとき、「持ち続けていれば上がる」と思ってしまうこと、これこそが塩漬け株発生の要因となるのです。

3の行動は、さらに細かく2つのパターンに分けることができます。

  • 3-1.「この株は業績も良いし株価の下げは一時的だから持ち続ければ必ず再び上昇するはず」と考えて持ち続ける (積極的塩漬け株形成派)
  • 3-2.「株価が下がって含み損を抱えてしまったが、今売ると損失が確定してしまうし、持ち続ければ株価が上がるかもしれないから売らないでおこう。」と考えて持ち続ける (消極的塩漬け株形成派)

「株価は長期的には上昇する」という先入観が危ない

 実は、3-1.のパターンで「塩漬け株」を作ってしまう根底には、「株価は長期的には上昇するものである」という意識が働いているのではないか、と筆者は考えています。

 現に、戦後の高度経済成長時代を経て、バブルの頂点に向かうまでは、途中で幾多の株価急落があっても、持ち続ければ結局は買い値を上回ってくれました。「長期投資をすれば報われた時代」です。

 しかし、バブル崩壊以後は、持ち続けるほどに株価は下落していき、「持ち続ければ株価はいつか上昇して買値を上回る」という過去の常識はもはや通用しなくなってしまいました。個人投資家は、このことに一刻も早く気付かなければなりません。「株価は長期的にみて上昇することも下落することもある」、これがバブル崩壊以後の日本株における「新常識」です。

 株価が長期的に下げ続けることもある、ということが誰の目からみても明らかになったバブル崩壊後の日本株。そんな日本株に投資するからには、「持ち続ければ株価は上がる」という思い込み、期待、祈りは絶対に禁物です。

 たとえ持ち株が業績好調で将来の上昇間違いなしと誰もが思っている銘柄だとしても同じです。実際にはそうした銘柄の株価が上がるどころか大きく下がるケースは2006年の新興市場バブルのように枚挙に暇がないからです。

「持ち続ければいつか株価は買値を上回る」という考え方を排除しなければ、これからの株式投資では生き残れないのです。

「含み損を抱えていても、ゴールで利益を得ている」という保証はない

 確かに塩漬け株を持ち続けた結果、その後買値を上回って大きく上昇することももちろんあるでしょう。でも、大失敗を避けたいのなら、そうならない可能性を重視した行動、つまり損切りを実行する必要があるのです。損切りした後、株価が上昇基調に転じたら、その時に買いなおせばよいだけの話です。

 塩漬け株を発生させている個人投資家の中には、自分自身が「塩漬け株を抱えてしまっている」こと自体気がつかない、もしくは認めたくない、という人たちも少なくないのではないでしょうか。

 特に、「バイ・アンド・ホールド」の長期投資戦略を取っている個人投資家であれば、保有途中で持ち株の株価が値下がりすることは、「塩漬け」でも何でもなく、単なる途中経過に過ぎない、と思うかもしれません。

 しかし、その思考こそ、変えていかなければならないのです。途中経過では含み損を抱えていても、ゴールでは利益を得ているという保証は全くありません。塩漬け株の発生は「失敗」であると認めることが必要です。バイ・アンド・ホールド戦略における通過点に過ぎないという考えは捨て去らなければなりません。

 いまだに、「株式投資で損切りは不要」と主張する専門家が数多くいますが、そんな主張は論外です。株式投資を巡る環境はバブル崩壊を境に一変したのです。今は、損切りをしなければ株式投資で生き残れない時代になったことに一刻も早く気付いてください。

 3-2.のパターンは、損切りの重要性は頭で分かっていても、心理的にどうしても損切りができない人にみられる投資行動です。しかし、損切りは株式投資で大失敗せずに生き残るためには絶対に必要ですから、ぜひ実行できるようにしてください。

 長期的上昇相場でない限り、損切りが必要な局面は何度も訪れるはずです。そんな時、損切りを躊躇なく実行できる個人投資家こそが成功する投資家です。

「損切りができない」投資家は途方もない含み損を抱えてしまう危険と常に隣り合わせであることをぜひとも理解するようにしてください。

(足立 武志)

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