「チャートで為替・株式相場を読む・昨日のドル/円乱高下相場での実践的トレードテクニック」
トウシル / 2017年5月25日 0時0分
「チャートで為替・株式相場を読む・昨日のドル/円乱高下相場での実践的トレードテクニック」
標準偏差ボラティリティトレード実践編
筆者のメインの取引手法である<標準偏差ボラティリティトレード>の概要は以下の通りである。
<標準偏差ボラティリティトレードの概要>
パラメータ21のボリンジャーバンドを表示させる
(株式インデックスは±0.6シグマ・通貨は±1シグマ)
パラメータ26の標準偏差を表示させる
- トレンドの発生(保ち合い離れの判定方法)
標準偏差が上昇しはじめた時 - 新規建玉のポイント
エントリー(新規注文)は相場がボリンジャーバンド±1シグマ(株式インデックスは±0.6シグマ)の外に飛び出した時 - 損失を限定しつつ利益を伸ばす手仕舞いのポイント
手仕舞い(エグジット)は相場がボリンジャーバンド±1シグマ(株式インデックスは±0.6シグマ)の内側に入った時、あるいは、トレーリングストップ注文で決済する
<注:トレーリングストップ注文とは>
逆指値(ストップロス)注文をより効率的に用いるための注文方法で、ストップロスのための逆指値注文を置いておくだけではなく、実勢の取引レートとほぼ同じ値幅間隔で、ストップ注文の指定レートを徐々に有利な方向へ自動的に追尾してくれます。買いポジションの場合は、相場の上昇に合わせてストップロス注文の指定レートを切り上げてくれます。逆に売りポジションの場合は、相場の下落に合わせてストップロス注文の指定レートを切り下げてくれます。このように損失の最小化と利益の最大化をはかる注文方法がトレール注文です。
下のS&P500CFDのチャートには標準偏差以外に2種類のADXが表示されている。トレードにエントリーするうえで重要なのは、チャート下段のADX(8)、ADX(14)、標準偏差ボラティリティ(26)の3本のラインが一緒に上がっている局面(丸で囲った黄色い部分)を狙うことだ。3本のラインが一緒に上がっている局面はトレンドが大きくなる可能性を秘めている。
標準偏差ボラティリティトレード(サンプル:S&P500CFD日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
エントリー(新規建玉)ポイント=赤の矢印
標準偏差ボラティリティトレードはいっさい最適化をしないトレード手法で、すべての市場と時間枠(タイムフレーム)に拡張が可能である。また、オプション(ボラティリティ)の売りにも威力を発揮する。
筆者の手法をフォローしている人たちから、「この手法を知って以来、運用パフォーマンスが格段に向上した」というお褒めの言葉を頂戴しているが、相場には思わぬ落とし穴が沢山ある。どんな手法であれ、すべてのトレードがうまくいくわけではない。相場は確率に賭けるゲームである。調子に乗り過ぎず、必ずストップロス注文を置いてトレードしていただきたい。
相場の実践テクニック
さて、昨夜の筆者のトレードを振り返ってみよう。4月24日の東京市場はNY市場の流れを受け継いでドル高円安の動きが優勢となった。この流れはロンドン市場まで続いた。6月の米利上げ期待と株高を背景にした動きである。
このドル高円安の局面で、筆者はドル/円の30分足のタームフレームでドル買いポジションを持っていたが、相場がボリンジャーバンド(21)の+1シグマラインを割り込んだのでポジションを損切りした。その後、ドル円は急落した。これは発表されたFOMC議事録の「最近見られる経済活動の減速が一過性のものだという証拠を待つのが賢明だ」という文言に反応した動きであると解説されている。
ドル/円(30分足) 調整相場
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
そういった後講釈はどうでもよいが、読者の皆さんに注意を促したいのは、上のチャートでは標準偏差(26)の波形がドル買いトレンドの継続に見える点である。この30分足チャートをよく見ると、ドル買いトレンドは一旦ピークアウトしてからドル売りトレンドが発生しているのだが、視覚的に判別がつきにくい。
こうした局面で筆者が何をしているかというと、取引のタイムフレームを30分足から15分足に短縮化するのである。下のドル/円の15分足をみていただきたい。30分足に比べると、標準偏差(26)の形状にドル買いトレンド相場からドル売りトレンド相場への転換が明確に表れている。
ドル/円(15分足) 調整相場
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
もう一つ、チャートの視覚的な弱点を指摘しておく。下はドル/円の日足チャートである。昨年11月~12月のトランプラリー相場の変動率(ボラティリティ)が大きかったため、チャート下段の標準偏差(26)の動きをみると底這いになっており、ほとんどトレンドが発生していないように見える。
ドル/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
しかし、チャートを直近の相場だけに拡大してみると、ドル/円の日足にもトレンドが発生していることが判る。逆に拡大しすぎると、標準偏差が上がっているのか下がっているのかさえ分からなくなってしまう。これらはチャートソフトの弱点であるが、この30年改善されていない。チャートの開発費(コスト)が大幅に上昇するからだ。
ドル/円(日足)拡大チャート
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
日足相場は退屈だ。下の日経平均CFDやドル/円の日足をみてみると、相場のトレンドというものは日足や週足ではなかなか発生してくれないのが常である。しかし、タイムフレームを日足から4時間足に変えるだけで、相場の印象は劇的に変わる。トレンド発生という収益機会が増えている。下のドル/円の4時間足から30分足までのチャートをみれば、タイムフレームを変えることによって、収益機会がいくらでもあることがわかるだろう。
ここで注意したいのは、トレンドが発生したからといって、そのトレンドが大きくなるかどうかはわからないことである。トレンド形成に失敗することも多い。しかし、トレンド形成の可能性がある相場にエントリーしない限りは、大きなリターンを得ることはできない。
失敗することや、損をすることは悪いことではない。相場で損をするのは、相場についていくコストである。システマティックに損切注文を置いておけば、その損はあらかじめ決められた許容範囲の損失であろう。相場で一番大切なのは損切り(ストップロス)で、儲ける話はその先の話である。
日経平均CFD円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
日経平均CFD円(4時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
ドル/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
ドル/円(4時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
ドル/円(1時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
ドル/円(30分足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
為替市場の動きはユーロ中心の展開
仏大統領選の第1回投票後は地政学リスクが後退し、ユーロ/ドルを買う動きが強まっている。また、所謂トランプのロシアゲート問題がドル売りを促している。筆者はユーロ/ドルの日足相場には参戦していないが、4時間足以下のタームフレームでユーロ/ドルのトレンド相場のいくつかの局面に乗ることができた。4時間足や1時間足はきれいなトレンド相場が展開されている。
ユーロ/ドル(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
ユーロ/ドル(4時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
ユーロ/ドル(1時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
ユーロ/ドル(30分足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
為替市場全体を眺めてみると、ユーロ絡みの通貨ペア以外で面白そうなのは、新興国通貨である。現在、ランド/円の日足に買いトレンドが発生しているし、トルコリラ/円の日足は次のトレンド待ちの状況となっている。
ランド/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
トルコリラ/円(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
チャートで相場を読む
最後に原油と株式指数の動きもチェックしておこう。
原油はポジションサイズを考えるとちょっと怖い商品だが、トレンドの形状から筆者の周辺の投資家に人気があり、日足や4時間足でNY原油相場にエントリーしている人が多い。
NY原油CFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
NY原油CFD(4時間足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
株式指数の日足はまちまちである。FTSE100CFDの日足は標準偏差の動きがあまりきれいではないが、買いトレンド相場を継続している。
FTSE100CFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
NYダウCFDの日足はここから数日の動きが重要で買いトレンド発生の可能性がある局面だ。
NYダウCFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
ドイツのDAXCFDとフランスのCAC40CFDの日足は、しばらく調整相場となりそうだ。
DAXCFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
CAC40CFD(日足)
上段:ボリンジャーバンド(21)±0.6シグマ=赤のバンド
下段:標準偏差ボラティリティ(26)=青いライン
相場に絶対の法則はない。相場を正確に予測することは誰も出来ない。筆者も30年にわたり相場と関わってきたが、投資の世界はつきつめてやりだすと、終わりの見えないことばかりなのである。それでも相場とは一体何かと言うと、それは「確率に賭けるゲーム」であろう。筆者が心がけていることは、勝つ確率の高い時期に投資を行うということである。みなさん、ストップロス注文をお忘れなく!
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日々の相場動向についてはブログ『石原順の日々の泡』を参照されたい。
(石原 順)
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