「英国の新幹線」が日本の道を昼間走った理由 「地元の子供に見せたい」と、実現に向け奔走

東洋経済オンライン / 2017年3月21日 8時0分

3月5日、交差点で大きくカーブする英国向け高速車両(記者撮影)

新幹線車両がトラックに牽引されて道路を走る姿を、テレビや雑誌で見たことがある人もいるかもしれない。鉄道車両メーカーの工場で造られた車両が鉄道会社に納入される際、線路ではなく道路が使われることもある。

こうした陸上輸送(陸走)は、通常深夜に行われている。全長25メートルもの車体が交差点でカーブする際は、反対車線に大きく張り出さないと曲がりきれない。しかも時間をかけて慎重に曲がるので信号機の操作も必要となる。自動車の交通量が多い昼間の陸送は極めて困難なのだ。

こうした陸送スケジュールが事前に公表されることはまずない。珍しい光景を一目見ようと多数の人が集まり、交通の支障になるのを防ぐためだ。いつ走るのかわからず、走るとしたら真夜中。このため陸送風景を実際に見ることができるのは一部の人に限られていた。

■下松と鉄道のかかわりは深い

ところが3月5日、山口県下松(くだまつ)市で高速鉄道の車両が日中に道路を走った。しかも事前の予告付き。前代未聞の“イベント”はなぜ実施されたのだろうか。

下松市は山口県の南東に位置する。古くから工業が栄え、瀬戸内工業地域の一角を担う。

下松と鉄道のかかわりは深い。1917年、日立製作所の創業者である久原房之助がこの地に日本汽船笠戸造船所を設立し、1919年から機関車の製造を開始した。1921年に日立製作所が笠戸造船所を取得し、このときから日立の鉄道車両製造の拠点となった。以来、C62やD51といった蒸気機関車から新幹線0系、N700系、私鉄各社の通勤電車に至るまで多数の鉄道車両を世に送り出してきた。このため笠戸事業所を有する日立は、国内の鉄道車両製造では川崎重工業と並ぶ2強と称される。

笠戸事業所の就業者数は期間工も合わせるとおよそ1400人。さらに協力会社三十数社の従業員が合計で1300人を超える。下松市の人口は5万6000人なので、下松市にとって日立の鉄道事業はなくてはならない存在だ。

その日立では、目下英国向けの車両製造がヤマ場を迎えている。2007年に英国CTRL線を走る高速列車28編成、168両を2億5000万ポンドで受注した(その後1編成追加発注があり29編成、174両に)。さらに2012年にはIEP(都市間高速鉄道計画)の受注に成功し596両の高速鉄道車両の製造に着手、翌2013年には追加で270両を受注した。保守契約も合わせれば総額57億ポンドのビッグプロジェクト。車両製造は2018年頃まで続く。

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