イスラムとキリストの分断が深まる国の苦悩 インドネシアで起きた政争めぐる大混乱

東洋経済オンライン / 2017年5月20日 8時0分

インドネシアの選挙では投票を終えた印として指にインクを付ける 二重投票を避ける目的だが、選挙に行った証拠として若者はSNSに投稿も(写真:AP/アフロ)

とあるプロジェクトで共に仕事をした外国人女性と、お昼の休憩に東京・渋谷のラーメン店に入ったときのことである。

■ハラールの店を探そうと思ったが…

「豚骨ラーメンください。ホルモン入りでオネガイシマス」

彼女の注文に思わず耳を疑った。なぜなら、彼女はイスラム教徒が国民の約9割を占めるインドネシア人だからだ。

インドネシア人ならば、イスラム教徒だろうとすっかり思い込んでいた私は、豚肉やアルコールは駄目かもしれない、なんならハラールの店を探したほうがよかろうか、などといろいろと気を使っていたのだが、彼女がランチにリクエストしたのは「ラーメン店」。そして、のれんをくぐったのは、日本人の若い女性だって尻込みするかもしれない、ホルモン入りのガッツリ系が有名な、男気あふれる気合の入った店舗だった。

実にうまそうに、ホルモンたっぷり、こってりと光る濃厚なスープをずずずっとすする彼女。「……ひょっとして、イスラム教徒ではないの?」。

すると、彼女はいたずらっぽく笑った。「私、キリスト教徒なのよ!」。

インドネシアは、世界第4位の総人口約2億5500万人のうち、約9割がイスラム教徒という、世界最大規模のムスリムを抱える国家である。これまで、インドネシアには取材や旅行で幾度となく足を運んだが、出会った現地の人のほとんどがイスラム教徒だったので、彼女のルーツににわかに興味が湧いた。聞くと、彼女は中国系で、祖父母の時代に中国から移住してきた3世代目なのだという。

実は、インドネシアには、中国から移住したキリスト教徒が多い。世界各国の人口統計による中国系移民の分布調査(2012年)では、インドネシアに767万人と、世界でいちばん中国人移民が多い国となっている。

彼女は続けた。「でも、私はジャカルタ生まれジャカルタ育ちだから、 生粋のインドネシアっ子によく間違われるわ!」。確かに、浅黒く焼けた肌は南国の雰囲気をうかがわせ、ルーツが中国であることは想像がつかなかった。

■中華系キリスト教徒を取り巻く空気が一変している

そのインドネシアで、まさに今、彼女のような中華系キリスト教徒たちを取り巻く空気が一変しようとしている。4月19日に行われた、インドネシアの首都・ジャカルタ特別州知事選の決選投票で起きた波乱と、それに続いて起きた現知事の収監という、一連の予想外の展開である。分断が叫ばれたフランス大統領選の影に隠れ、日本ではあまり注目されなかったが、東南アジアでも地政学的な緩やかな変化がじわりと起きていることを予感させる出来事だった。

東洋経済オンライン

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