鳥貴族の全品値上げ、背景に「改正酒税法」も 居酒屋の悩みは人件費高騰だけではない

東洋経済オンライン / 2017年9月4日 8時0分

同業他社からベンチマークとされてきた鳥貴族。ついに値上げに踏み切った(撮影:今井康一)

焼き鳥店を東名阪中心に展開する鳥貴族は8月28日、全品280円(税抜き)均一の価格を改定し、10月1日から全店で一斉に全品298円(同)にすると発表した。値上げは実に28年ぶりになる。

鳥貴族は主な要因を人件費や食材仕入れ価格の高騰と説明する。「そもそも居酒屋で働こうと思う人が減っている。バイトの時給をそうとう上げざるをえない」と購買担当者は嘆く。

同社は約2年前に280円均一を維持するためのプロジェクトを立ち上げるなど、さまざまなコストを削減してきた。だが、業界を覆う人手不足の影響を避けることができなかった。

■法改正がじわり影響

もう一つ、見逃せない要因がある。6月に施行された改正酒税法だ。

今回の改正は、酒類の総販売原価(原価+人件費など)を下回る価格での過度な安売りを規制するものだ。酒類販売業免許を持つスーパーなどの小売店、業務用酒販店、卸業者などが取り締まりの対象になる。

スーパーなどでは改正後、すぐにビール価格が上昇した。それに対し、直接規制対象でない居酒屋など飲食店では、業務用酒販店や卸業者からの仕入れ値の上昇という形で、じわりと影響が出始めている。

関東圏を中心に展開する串カツ田中はすでに7月、ビールを390円から399円に、ハイボールを350円から370円に値上げした。

「いきなり!ステーキ」や「ペッパーランチ」を運営するペッパーフードサービスでは、酒類の中でも特にビールの仕入れ価格が1割以上上昇したという。それを受けて8月から9月にかけてビールの値段を480円から500円に20円値上げする。

競争の厳しい居酒屋にとって、値上げの判断はそう簡単ではない。「響」や「魚盛」を都市部で展開するダイナックの担当者は、「確かに仕入れ価格は1割程度上がっているが、単純な値上げでは消費者に説明がつかない」と話す。具体的な値上げ方法を現在検討中という。

仕入れ値上昇の影響を吸収しようと、サワーやハイボールなど比較的利幅の大きい酒類の拡販や、新規メニュー開発などに取り組む居酒屋は多い。しかし、それだけでカバーするのは難しくなってきた。

■「鳥貴族の対応を注視していた」

実は「鳥貴族が今回の仕入れ価格上昇にどう対応するのかを注視していた同業が多かった」(都内居酒屋チェーンのオーナー)。

鳥貴族は、酒類も一律280円で提供してきた。ほかのビールに比べ高く販売されることの多いサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」も280円。それをどこまで維持するのか。鳥貴族は低価格を武器に消費者の支持を得てきただけに、その動向は業界の注目の的だった。

「どこが先に動く(値上げする)か、様子見していた居酒屋が多い」(都内酒販店店主)。その中で今回、鳥貴族が値上げに踏み切ったことで、動きやすくなると感じる競合チェーンは多いはずだ。

今後、業界に値上げの動きが広がってきそうだ。

東洋経済オンライン

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