マレーシアの歴史的政権交代はなぜ起きたか そのとき、現地の人々が取った行動とは?

東洋経済オンライン / 2018年5月17日 8時0分

5月9日に投票が行われたマレーシア議会下院選挙は、92歳のマハティール元首相が率いる野党連合が過半数議席を獲得して勝利した(写真:Lai Seng Sin/REUTERS)

歴史的な政権交代となったマレーシア。5月9日の第14回下院議員選挙では、連立与党「国民戦線(BN)」が、92歳のマハティール・モハマド元首相が率いる野党連合「希望連盟」に敗れ退陣した。1957年の独立以来、初の政権交代。現地から人々の様子をレポートする。

■諦めが「驚き」に変わった夜

「奇跡だ」「信じられない」という声。

大方の予想に反し、なぜ92歳の元首相が率いる野党連合が、独立以来の長期政権を破ったのか。

政権交代の背景には、長期政権による汚職やスキャンダルがあった。政府系ファンド「1MDB」をめぐる汚職事件で、ナジブ・ラザク前首相の関与が疑われた。消費税の導入にも根強い反対がある。

マレーシアには人口の過半数を占めるマレー系に加え、華人、インド人という3大民族が住む。飲酒をせず豚肉も食べないイスラム教徒のマレー系に対し、豚肉を食べ飲酒をする華人、さらにはタミル語やヒンドゥー語を話すインド人と、それぞれがコミュニティを形成。まったく文化も宗教も異なる3民族が微妙なバランスで共存してきた歴史がある。

長年の与党だった「国民戦線」は最大民族であるマレー人をブミプトラ政策で庇護し、彼らから支持を得てきた。ところが今回、マレー人の中にも野党に鞍替えする人が現れたのだ。この現象はマレーシアでも日本語で「マレー津波(Malay Tsunami)」と表現された。

選挙直前の4月9日には、偽ニュース禁止法が成立。投票日の直前に、マハティール氏の乗る予定だったジェット機に不具合が起きた。これをマハティール氏が国民戦線側による選挙妨害だと訴えたため、同法案に基づき警察がマハティール氏の調査を始めるなど、緊張したムードが流れた。

政府が故意に「投票率を下げようとしている」という批判も起きた。たとえば投票日は水曜日。マレーシア人の多くは投票のため、住民登録のある実家まで飛行機などで帰ることが多い。平日に帰省するのは、働いている人にとっては難しい。

事前の予想ではほぼ国民戦線有利の報道。前回の選挙の不正疑惑から、人々の間には今回もダメだろう、と諦めもあった。

ところが、開票後すぐは国民戦線が有利だったものの、10日0時の段階では、政府系メディアも含め、希望連盟有利の報道一色となっていた。マハティール氏は「勝利宣言」を出した。

現地のマレーシア人の間ではこの頃、SNSで「暴動が起きるかもしれない」「非常事態宣言する可能性がある」「祝勝を上げるのは自粛しよう」と警戒を深めるメッセージが出回った。外国人である私たちにも「明日は何があるかわからないから外出しないように」と警告した人も少なくない。

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