共働き妻が会社を辞めざるを得ない深刻事情 日本型雇用システムが子育てとの両立を阻む

東洋経済オンライン / 2018年6月4日 8時0分

仕事と家事の両立にみんな悩んでいる(イラスト:熊野 友紀子、デザイン:新藤 真実)

「体力の限界だった」――。

坂上由香さん(仮名・35歳)は、ため息をつく。坂上さんは昨秋、大学卒業後10年以上勤めた大手金融機関を退職した。

学生時代からキャリア志向が強かった坂上さんは、就職活動で人気ランキング上位の大手金融を志望、見事に内定を勝ち取った。100人以上いた総合職の同期社員のうち、女性は1割だけだった。

総合職の社員は20代で地方に飛ばされるのが慣例。同期が次々と地方に赴任するちょうどその頃、坂上さんは結婚して妊娠が発覚。会社側が便宜を図ってくれ、東京勤務を継続することになった。

■東京から名古屋、さらに埼玉へ転勤

修羅場は3年後に訪れた。

「これ以上、特例で東京勤務を続けてもらうことはできない」

名古屋への転勤を言い渡された。外資系金融機関に勤める夫は東京を離れられない。3歳の長男を連れて三重・津市の実家に住み込み、往復約4時間かけて名古屋まで通勤する生活を続けた。

関東圏への転勤を上司に何度も掛け合い、ようやく認められたのは4年後。第2子の長女の出産・育休を終えたタイミングだった。赴任先は埼玉・大宮支社。ただしフルタイム勤務だった前任の業務をそのまま引き継ぐため、上司からは「時短勤務を利用するのはやめてほしい」と言われた。

大宮支社への通勤時間は片道1時間強。毎朝5時起床、7時に長女を保育園に送って出勤。フルタイムで18時まで働き、保育園の迎えにダッシュ。夕食後には息子の宿題を見て、子どもの就寝後の22時から24時までに洗濯などの家事と持ち帰った仕事をこなした。

夫も激務で深夜帰りが続き、とても頼れない。その生活を2年間続け、感じたのが体力の限界だ。「環境改善の希望が見えたら会社に残ったが、兆しが見えなかった」(坂上さん)。息子に頼られるのも、せいぜいあと数年。その間寄り添ってあげたい気持ちもあった。

結局、会社を退職。今は週3日、定時で帰れるNPO法人で働いている。

安倍政権が掲げる「女性活躍」推進は、夫婦にとっては共働きが続けやすい社会といえる。同政権下で2016年4月、女性活躍推進法が全面施行。公共団体や民間企業に、女性活躍に向けた目標と行動計画の策定が義務づけられた。女性採用や育成に取り組む企業の裾野は確かに広がっている。

ただし、夫婦ともに企業勤めである場合、冒頭のような育児のほか、介護のような負担が加わると、生活のバランスが一気に崩れてしまう現実もある。しわ寄せが来やすいのは、主に育児と家事を負担している女性だ。

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