ベンチャーブームに沸く日本人が知らない壁 調達額急増も米国や中国と比べればなお小粒

東洋経済オンライン / 2018年7月9日 9時0分

次のメルカリはどこの会社か(デザイン:新藤 真実)

いま日本には、第4次ベンチャーブームと呼ばれる波がきている。2017年のベンチャー調達額は2791億円。これはボトムだった5年前の4.3倍の水準となる(ジャパンベンチャーリサーチ調べ、以下同)。金融緩和や2013年以降に相次いで設立された官製ファンドなどにより、ベンチャー市場にリスクマネーが流入。近年は、大企業もベンチャー投資にのめりこみ、市場拡大に拍車をかける。

■AI、宇宙、創薬・・・100億円級の調達が続々

ベンチャー企業1社当たりの調達額も高騰している。2017年の調達額ランキングを見ると、120億円を超えた1位のプリファード・ネットワークス(東京大学発のAIベンチャー)をはじめ、2位のスコヒアファーマ(武田薬品工業の事業を切り出した創薬ベンチャー)、3位のispace(月面探査を目指す宇宙ベンチャー)と100億円級の資金調達が相次いでいる。

国内では、過去10年間で100億円を超える調達は4件だが、うち2017年度だけで2件を占めた。平均調達額は3億円と5年前の約3倍の水準だ。大手ベンチャーキャピタル(VC)・ジャフコの井坂省三パートナーは、「バリュエーション(企業価値の相場)は高くなりがちだが、バブルという感覚はない。ポテンシャルがあるベンチャーに対して、大きく勝負を仕掛けてスケール(規模拡大)できるようになった」と評価する。

週刊東洋経済は7月9日発売号(7月14日号)で「ビジネスヒントはここにある!すごいベンチャー100」を特集。注目のベンチャー企業100社を総まくりで紹介するほか、活況に沸くベンチャー界の最新の動向を伝えている。

資金の出し手にも大きな変化が出ている。従来、日本のベンチャー投資をリードしてきたのは、ジャフコやグロービス・キャピタル・パートナーズといったベンチャーキャピタル(VC)だった。しかし2017年には、事業会社本体や傘下のファンドによるベンチャー企業への投資(コーポレート・ベンチャーキャピタル=CVC)額が、VCのそれを上回り、最大の投資主体となった(図③)。

背景にあるのは、日本企業の危機感だ。「AIをはじめ、デジタル化の波が押し寄せる中、大企業がベンチャー企業のアイデアや技術を取り込んで生き残ろうとする、オープンイノベーションの動きが加速している」(KPMG FASの岡本准パートナー)。

AIによる深層学習に強みを持つプリファード・ネットワークスには、2017年にトヨタ自動車が100億円超の出資を行ったほか、過去にはファナックやNTTも出資に参画。自動運転、工場の自動化などそれぞれの事業分野強化へ外部技術の取り込みを急ぐ。同年8月には、IoT(モノのインターネット)プラットフォーム大手のソラコムが、KDDIによって買収される(買収額は非公表)など、国内では珍しかった事業会社によるベンチャー企業の買収事例も出てきている。

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