福島はなぜ「水力発電」の増強を目指すのか 経済復興・自立のため人々は立ち上がった

東洋経済オンライン / 2018年8月14日 12時0分

福島県の猪苗代町と会津若松市の境にある十六橋水門(画像:r.s / PIXTA)

あまり知られていないが、福島では県を挙げて再生可能エネルギーの開発を進めている。それに貢献しようと昨年設立された福島水力発電促進会議(福島県は「再生可能エネルギー」王国を目指す:参照)は、特に水力発電の増強に力を入れている。再エネといえば太陽光発電や風力発電を思い浮かべるが、実は水力発電もその1つだからだ。

それにしても、なぜ福島で再エネ? 福島で水力? という疑問がわくが、その理由は、あの原発事故による福島県の経済危機だという。

今月刊行された『水力発電が日本を救う ふくしまチャレンジ編』の監修者であり、福島水力発電促進会議の座長でもある竹村公太郎氏に解説してもらった。

■危機にある福島県経済

福島県全体が再生可能エネルギーの開発に向かおうとしているのは、福島県が危機的な状況にあるからです。

まず、深刻なのは経済状況です。震災前、福島県の経済規模は、東北地方では宮城県に次ぐレベルにありました。震災前の福島県の予算は約1兆円あり、2800億円は税収でまかなうことができていました。ところが、震災により福島経済は大きな打撃を受け、震災の年である2011年には、わずか1700億円に激減したのです

実に4割も税収が減っていることからわかるように、福島経済界は壊滅に近い状態になっていました。

現在は復興予算で財政は維持されているものの、これもいつまでも続くものではありません。もし国の復興関連予算が完全に絶たれ、全国の他都道府県と同様に地方交付税交付金のみで、あとは自県の税収だけで予算を作るときがくればどうなるのでしょうか。

かつての1兆円規模は不可能で、7000億円弱になるのではないかという予想さえあるそうです。

福島県経済がこれほどまでに疲弊してしまったのは、震災や原発事故の直接的な被害だけが原因ではありません。むしろ深刻なのは、あの事故以降に広がってしまった福島に対するマイナスイメージによる風評被害なのです。

風評被害が目立つのは、まず、農業分野です。福島県では県内の農産物の安全性を証明するために、県産の農産品に関して全品を精密検査しています。すべての食料品について完全に検査するなどということは、日本国内ではもちろん、全世界を見てもほかには例がなく、世界一の安全証明だと言えるでしょう。

ところが、これほど厳しい検査体制でも、農業産品に対する風評被害はなくなってはいません。

風評被害は農業についてだけでなく、工業についてもあります。福島県の産業のうち農業が占めるのは1割以下であり、最も割合が大きいのは工業で、30%以上を占めます。

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