郵便局員の呆れた不正に下った甘すぎる処罰 わずか半年の資格停止、育休理由に調査凍結

東洋経済オンライン / 2018年11月19日 6時40分

「罠」にはまればおカネを喪失、長寿社会を生きていけない(デザイン:池田 梢)

2013年3月20日。たまたま東京に滞在していた北陸地方在住の佐藤凛さん(仮名・37歳)に郵便局員から電話があった。保険契約をしてほしいという。「投薬治療中だから契約できない」と断ったが、その局員は凛さんがかつて作成した損害保険の契約書の署名をなぞり、「佐藤」の名字の印鑑を購入し押印。養老保険の契約書を偽造した。

同29日昼にはその局員が凛さんの自宅を訪れ、凛さんの夫・健一さん(仮名・35歳)にかかわる保険契約を迫った。健一さんは自宅から95㎞離れた自動車教習所に行っていて不在だった。局員は「(成績優秀者を表彰する)賞の期限が本日限りであり、時間がない」と言って健一さんの部屋に無断で立ち入り、健一さんが自筆で書いた書類を探し出し、本人の字体をまねて告知書に署名をした。居合わせた凛さんは数年前、この局員から頭部を何度も殴打されたことがあり、怖くて制止できなかったという。局員が賞を取りたかったのは、みずからが起こした猥褻事件で他県に飛ばされていたのを、実家のある県に戻してもらうためだったという。

■「すぐに解約したら不正を疑われる」

同日夜、凛さんが「すぐに保険を解約したい」と電話で局員に告げると、「すぐに解約したら不正契約と疑われる。解約するな」と強く拒否した。そこで仕方なく、一筆書いてもらうことでその日は矛を収めることにした。紙に「許可を得ず本人に代わって申込書を書いた」「告知をせず被保険者の同意書を書きました」「3月年度末どうしても実績が必要だった」と局員が直筆で書いた。

『週刊東洋経済』は11月19日発売号で「保険の罠」を特集。「人生100年時代」といわれる今、何がムダで「いらない保険」なのかを検証している。

2015年6月14日。凛さんはかんぽ生命の本社コンプライアンス統括部にこの不正行為を報告。調査を依頼した。局員は同部の調査に、「(往復190㎞を)時速150㎞出して高速道路を走行し、(教習所にいた)健一さんに5分で告知を行った」と答えた。

同部は局員のこの供述よりも、凛さんが提出した録音記録などの資料を「信じるに足る証拠」とした。同年7月24日、かんぽ生命はこの局員の募集人資格を半年間凍結した。「他の生命保険会社なら解雇になってもおかしくないところ」(別の郵便局員)をたったの半年間、募集人資格を凍結するだけで終わった。

同年10月19日には凛さんや健一さんの了解のないままに契約したことを認め、かんぽ生命は保険料を返金した。不正を報告したことに逆上した局員は、同年9月に凛さんに暴力を振るい、それが傷害事件となり書類送検にまで至っている。凛さんは日本郵便に謝罪を求めたが、「【保険料】返金のご案内」という文書の中ですでに謝ったと言い、局員が凛さんに迷惑をかけたことを謝らなかった。

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