ゴーンが「虚偽記載」で逮捕された本当の意味 司法取引も絡めた立件で狙う本丸はどこに

東洋経済オンライン / 2018年11月21日 16時20分

事件の真相解明はこれからだ(撮影:梅谷秀司)

ルノー・日産自動車・三菱自動車の会長を兼務し、カリスマ経営者として知られるカルロス・ゴーンが金融商品取引法違反の疑いで逮捕された。

東京地検によれば、2011年3月期から2015年3月期の各連結会計年度におけるゴーンの金銭報酬が合計約99億9800万円であったにもかかわらず、合計約49億8700万円と記載した有価証券報告書を提出した疑いがもたれている。この事実をもって、19日、東京地検特捜部は、ゴーンと日産自動車代表取締役のグレッグ・ケリーを逮捕した。

■有価証券報告書の虚偽記載とは

今回、逮捕の原因となったのは、前述のとおり、金融商品取引法に基づく有価証券報告書虚偽記載の罪である。上場企業などは事業年度終了後3カ月以内に所定の書式にしたがって有価証券報告書を金融庁に提出する義務を負う(金融商品取引法24条)。また、2010年より、コーポレート・ガバナンス強化の一貫として、役員報酬の総額などを有価証券報告書に記載することが求められ、さらには、1億円を超える報酬額については役員ごとに記載することが必要となっている。

金融商品取引法は、市場の公正と健全を守り、投資家の保護を図ることを目的としている。有価証券報告書を含む企業内容等開示制度はその趣旨に従い、企業の状況を適切に開示することによって、投資家に正しい判断材料を提供し、市場の公正さを守るための制度である。

したがって、有価証券報告書における重要事項について虚偽記載を行った場合は、投資家に誤った情報を提供することとなるため、提出者には、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金が科される(同法197条1項1号)。さらには、法人等に対する両罰規定も存在し、この場合は7億円以下の罰金が科される(同法207条)。

過去にもカネボウやライブドア、日興コーディアル証券、IHIなどで有価証券報告書の虚偽記載事案は存在し、近年ではオリンパスや東芝の事案が記憶に新しい。しかし、これらの案件はどれも利益水増しや損失隠しなどを行って企業の業績を実態より良く見せようとした粉飾決算事件である。今回、日産自動車が行ったのは、取締役の報酬の過少申告という極めて珍しい事案であり、およそ同社のようなグローバル企業が行うようなものではなく、言ってみれば町の中小企業のオーナー社長が自分の脱税のために行うようなものであり、事案の本質が大きく異なる。

言うまでもないことだが、有価証券報告書は、代表取締役2人で作成できるようなものではない。財務や経理担当の役職員や、監査役・監査法人などその他多くの関係者の作業を経て作成されるものである。日産自動車ほどの大企業となれば、その数は少なくとも数十人には及ぶであろう。

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