10年後「死亡率」が最も低い睡眠時間は何時間か 日本人が知らない睡眠負債の恐怖

東洋経済オンライン / 2019年2月16日 7時40分

「睡眠負債」を重ねることで起こる、さまざまな危険とは(写真:プラナ/PIXTA)

1日24時間という限られた時間の中で、やらなければいけないことが山積している。だから、睡眠時間を犠牲にするのはやむをえない。とかく日本人は、そう考えがちです。

もともと日本人の場合、睡眠時間を削って何かに励むことを「美徳」のように捉え、「寝る間も惜しんで」仕事や勉強をすることが必要だ、というメンタリティが根づいてしまっているのでしょう。しかし、それが逆に、体調をガタガタにするだけでなく、仕事の成果さえも台無しにしてしまっていたとしたら……。

「睡眠負債」は取り返しのつかない結果をもたらしかねません。健康も維持しながら、仕事で成果を上げるために最適な睡眠時間とは。スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所(SCNL)の西野精治所長が、近著『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』から世界各国の研究結果をもとに解説します。

■こんなに危険な「睡眠負債」

「睡眠負債(sleep debt)」という表現を用いて、積み重なる睡眠不足に警鐘を鳴らしはじめたのは、アメリカ人のウィリアム・C・デメント教授です。

私も籍を置くスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の創設者で、90歳を超えられた今もご健在。今日の睡眠研究を牽引してこられた第一人者です。レム睡眠を発見したシカゴ大学のクライトマン研究チームのひとりでもあり、急速眼球運動のある睡眠のことを「レム睡眠」と呼びはじめたのも、デメント教授でした。

「ヒトは一定の睡眠時間を必要としており、それより睡眠時間が短ければ、足りない分がたまる。つまり眠りの借金が生じる」
 
これを「sleep debt」と呼び、「借金がたまると、脳や身体にさまざまな機能劣化が見られる。睡眠不足は危険である」と呼びかけたのです。1990年代のことです。

アメリカでも、日本と同じように「睡眠不足(sleep insufficiency)」という言葉は一般によく使われています。では、睡眠不足と睡眠負債はどう違うのか。いうなれば、「手持ちのお金が足りず、借りをつくるものの、すぐに返済できる状態」が「不足」、「借金に次ぐ借金で、借りがどんどんふくらみ、返すあてもなく、にっちもさっちもいかなくなる」のが「負債」。こう考えると違いがわかりやすいでしょう。

睡眠不足が積み重なり、慢性化してしまうことで、睡眠負債に陥るのです。

日本で「睡眠負債」という言葉が流行語になるほど広まったのは、2017年にNHKの番組が取り上げたことがきっかけでしたが、睡眠研究に携わっている人たちは以前から使っていた言葉でした。

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