33歳ADHDの男性が働くことを恐れる深刻事情 20代「正社員」の恋人に養ってもらっている

東洋経済オンライン / 2019年2月22日 7時0分

発達障害のひとつ「ADHD」と診断されたケンジさん(左)と、彼を支えるチエさん(編集部撮影)

現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

今回紹介するのは「交際5年目になりますが、彼は社会復帰できず無職のまま5年が過ぎています。彼がADHDかも?と思い始めたのが2年前で、病院に行ったらやはり大人のADHDでした。何に困っているかというと、一番はお金です」と編集部にメールをくれた女性の恋人、33歳の男性だ。

■高校には進まず、地元の舗装会社に就職した

最近、本連載で発達障害のある人を取材する機会が急増している。なぜ、増えたのか? 発達障害があると貧困に陥りやすいのか? 彼らに話を聞きながら、私の中にはいくつもの疑問がわいた。

あるとき、ひきこもりの人たちを支援するNPO法人の関係者からこんな話を聞いた。

「先日、30代になる子どもが発達障害と診断されたという父親からの相談を受けたんです。ただ、どうにも話に脈絡がなくて……。もしかしてこの父親も発達障害かな、と感じたんです。でも、彼は会社員で、定年退職まで問題なく勤め上げているんですよね。

考えてみると、20年前、30年前は、例えば『腕はいいけど、不愛想な板金工』とか、『人付き合いは苦手でも、経理を任せたらピカ一』とか、そんな人がいたなと思って。昔は、多少変わり者と思われても、普通に社会や地域に居場所があった。でも、今は、学校でも職場でも、高い対人スキルばかりが求められるようになってしまいましたよね」

社会に余裕がなくなった、とこの関係者は言った。「大人の発達障害」が増えたのは、単に医療・診断技術が向上したからだけではなく、社会が変容したからなのか。

今回、話を聞いたケンジさん(33歳、仮名)も2年前に、発達障害のひとつ、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された。この5年間、仕事に就けていない。

出身は東北のある地方都市。小学生の頃から、じっとしていることができず、授業中も教室内や廊下を歩き回る子どもだった。いじめには遭わなかったが、教師からは「怒られた記憶しかない」。中学を卒業する頃、親族に借金トラブルがあることがわかり、「だったら、自分も早く働こう」と、高校には進まず、地元の舗装会社に就職したという。

会社では、早朝に事務所を出発し、山奥の現場で、翌朝までぶっ通しで作業をするようなシフトが頻繁にあった。給与は手取りで約10万円。手渡しで、明細もなかったので、何が、いくら天引きされていたのかわからない。雇用形態もわからない、という。

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