全米を欺いた「36歳黒人俳優」のヒドい自作自演 ジャシー・スモレットの非常識すぎる大ウソ

東洋経済オンライン / 2019年2月22日 13時30分

ハリウッドで批判殺到中の黒人俳優ジャシー・スモレットがついたウソとは?(写真:Alexander Tamargo/Getty Images)

いよいよ来週2月25日(月)、「第91回アカデミー賞授賞式」が開催される。今回のアカデミー賞作品部門には、『ブラックパンサー』『ブラック・クランズマン』『グリーンブック』と、黒人俳優が主役を務める映画が3本も入っており、人種差別の根絶に意気込むハリウッドの進歩を感じる。

だが、そこに完全に水を差すような出来事が起こった。それもハリウッドで活動する黒人俳優によってだ。

■白人レイシストによる暴行事件と思いきや…

ことの始まりは、1月末にシカゴで起きた暴行事件。午前2時ごろ、フォックス系列のテレビドラマ「Empire 成功の代償」にレギュラー出演するジャシー・スモレットが、2人組の男に突然襲撃された。スモレットが警察に話した内容によると、2人組は彼に対して黒人差別、ゲイ差別の言葉を吐きつつ、首をロープで縛る、漂白剤を浴びせるなどの暴行を加えた。また、犯人らは「ここはMAGAの国だ」とも言って逃走。彼は自分の足で近くの病院に行き、治療を受けたという。

彼は「犯人は2人組の白人だった」と語っており、「MAGA」がドナルド・トランプの選挙スローガン「Make America Great Again(アメリカをもう一度偉大な国に)」の略であることから、警察は白人至上主義者によるヘイトクライム(差別による犯罪行為)の線で捜査を始めた。

スモレットはゲイであることをオープンにしているため、LGBT団体「GLAAD」はすぐ彼を支持する声明を発表。有色人種の地位向上を目指す団体「NAACP」も、トランプの人種差別的アプローチを批判する声明を出した。事件について意見を聞かれたトランプ大統領は、「とてもひどい出来事だ」と、ひとことだけコメントした。

心も体も傷ついたばかりだというのに、事件があった週末、予定どおりロサンゼルスでのライブに出演したスモレット。ライブ中、涙声になりつつ、「僕は、今日、ここに来る必要がありました。あいつらに勝たせるわけにはいかないですから」と観客に語りかけ、歓声を受けた。

決して誰もが知るビッグスターではなかったスモレットの名前は、この一件で、たちまちメディアに飛び交うようになった。SNSでは、セレブから一般人まで、あらゆる人々がヘイトクライムへの非難や、スモレットへの支持を表明した。

しかし、スモレットには不自然な点もあった。彼の話では、犯人が「ここはMAGAの国だ」と言ったのを、そのときちょうど携帯でつながっていたエージェントが聞いているとのことだった。なのに、スモレットが警察に携帯の通話記録を出し渋り、さらに何日かしてようやく提出されると、通話記録が削除されていたというのだ。

■「白人2人組による暴行事件」はヤラセ

そして2月15日、事件は新たな展開を見せる。逮捕された2人組は、なんと黒人兄弟。さらにその1人は、「Empire 成功の代償」にエキストラとして出演していたのだ。

警察は、事件がスモレットの計画によって起こったものとして捜査を方向転換。兄弟は、警察に完全協力することで釈放された。これまでにわかったことによると、兄弟はナイジェリア出身で、スモレットと一緒にワークアウトするような仲。兄弟が警察に提出した携帯記録を見ると、事件が起きた頃、スモレットと彼らの間には頻繁な通話記録があった。また、兄弟は事件前に襲撃のリハーサルをやったこと、スモレットからお金をもらう約束だったことも警察に語っている。

だが、実際の襲撃で、兄弟はスモレットにケガをさせることはしておらず、病院に行ったときの痣(あざ)がどうやってつけられたものか、2人にはわからないそうだ。兄弟はすでに起訴陪審に出廷し、ついにスモレットも20日、虚偽の被害届を出した容疑で逮捕された。

これらを受けて、スモレットをめぐる空気は一変。ロサンゼルスの街には早くも彼を風刺するポスターが登場している。1つは『ブラックパンサー』のパロディで、「Black Prankster(黒人のおふざけ人)」。

もう1つは『ブラック・クランズマン』のポスター中心に彼を据え置き、「主演俳優部門にあなたの1票を」とある。

彼に優しい言葉をかけていた人権支援団体も、一斉に彼を非難し始めた。

ロサンゼルスの市民権アクティビスト、ナジー・アリは、「私たちのメンバーには、ヘイトクライムの被害を受けた黒人、LGBTの人々が多数います。スモレットがついているうそは、本当の被害者たちのためになりません。そして、私たちは、スモレットがうそをついていると信じます。私たちは最初、多少、疑うところはあっても、スモレットを信じてあげました。しかし、この数日でそれがうそだったことが明らかになりました。彼は処罰を受けるべきです」と述べた。

ハリウッドではすでに、なぜ彼がそんなことをやったのかについて、推測が飛び交い始めている。

■知名度がほしかっただけ?

中には「ただ知名度がほしかっただけでしょう」「同情してほしかったのでは」という意見がよく見られるが、注目されるのは、フォックスが「Empire 成功の代償」から彼の演じるキャラクターを消そうとしていたという説。

5シーズンも続くドラマでは、主要キャラクターが死んだり、姿を消したりするのはよくあること。知名度の低い俳優にとってテレビドラマは大事な飯の種なので、スモレットはそれを守るためにヘイトクライムの被害者になって、フォックスが彼を消すわけにはいかない状況を作ろうとしたのではないかというのだ。

フォックス側は「彼を消す予定はまったくなかった」と、この説を否定している。しかし、自作自演がバレてしまったあとでは、スモレットは確実に番組から消されてしまうだろう。うそつき男が出るドラマなど、誰も見たくないに決まっている。もちろん、広告主もつかない。

この後、まだまだ驚きの詳細情報が出てくるかもしれず、裁判になればこれまた大注目となることだろう。それは最近、視聴率がぱっとしなくなっていた「Empire 成功の代償」に、思わぬ宣伝効果をもたらすことになるかもしれない。だが、その仕掛け人は、おそらく、その時にはもう撮影現場にいない。

猿渡 由紀:L.A.在住映画ジャーナリスト

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