34歳女性が「父の自死」で母を恨み続けた理由 彼女にとっては"生殺しの地獄"だった

東洋経済オンライン / 2019年3月2日 7時20分

「父の自死」について30年近く思い悩む女性が伝えたいこととは(写真:筆者撮影)

「親から子どもに説明することの重要性について、お話できたらうれしいです」。取材応募フォームから届いたのは、「11歳のときに父親が精神疾患で自殺した」という女性のメッセージでした。

18歳まで父親の死因を知らされず、独り身になった母親にできた恋人の存在や、その恋人との事実婚についても何も聞かされないまま、なし崩しに認めてきたといいます。短い文面から、長年のいら立ちが伝わってきました。

ある晴れた秋の日、待ち合わせたのは、新宿の小さな喫茶店でした。開店まであと数分のところ、甲州街道に面した店の前に、夕焼けのような橙色のストールを巻いた女性が立っていました。今回お話を聞かせてくれた、増原有紀さん(仮名・34歳)です。

■事実を隠されたとき呪いがかかる

母親は大学4年生のときに有紀さんを出産しています。子育てをしながら教員採用試験を受け続け、有紀さんが小学校に入った頃に合格し、臨時採用で働き始めました。

一流企業のエンジニアだった父親の様子がおかしくなったのは、小3くらいのときです。夜中に変なことを言い出したり、妄想めいたことを口にしたり。精神疾患で病院に通っていましたが、双極性障害(躁うつ病)だったのか、統合失調症だったのかはよくわからないといいます。

夜、父親が有紀さんのベッドに入ってくることもありました。その都度、母親が追い払っていましたが、何度か続いて2人とも寝不足になったそう。またあるときは、有紀さんが夫婦の寝室に連れて行かれ、性行為を見せられそうになったことも。「精神疾患で性欲が亢進(こうしん)して制御できなくなる人もいるようです」と、有紀さんは話します。

何も起きなかったのか、と思い切って尋ねると、「なかったと思います、記憶がないので。何かあったのかもしれないし、なかったのかもしれない。一生わかりません」とのこと。有紀さんの記憶は「母親の下着姿を見て気持ちが悪くなった」ところで途切れています。

両親が別居して母親の実家に身を寄せたのが小4の冬。父親は入退院を繰り返すようになっていました。この頃の記憶は定かでないのですが、父方の祖父母がときどきやってきて「明らかに母親を責めている」ということは、子どもながらにもわかりました。

父方の祖父母からはたびたび「お父さんとお母さん、どっちが好き?」と聞かれ、「ザラザラとした気持ち」を感じたそう。どっちも好きにきまっているのに、なぜそんなことを聞くのか? 祖父母はどうやら、母親が専業主婦をやめて働き始めたために、地方出身のエリートだった息子がおかしくなってしまった、と信じているようでした。

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