「ブレグジット」はなぜこれほど迷走するのか くすぶる「合意なきEU離脱」の偶発リスク

東洋経済オンライン / 2019年3月16日 8時0分

イギリスのメイ首相(写真:共同通信)

カオス(混沌)はさらに先へと持ち越されるのか――。

イギリスの欧州連合(EU)からの離脱、いわゆる「ブレグジット」をめぐって、イギリス議会下院が3月12日に離脱協定の修正案を大差で否決。13日には「合意なき離脱」を否決し、14日には離脱期限を今月29日から欧州議会開会直前の6月末まで「延期」することを可決した。

ただ、この期限延期は20日までに離脱協定案を再び議会で採決し可決されるという条件付きだ。もしまた否決された場合は「さらに長期の延期が必要になる」という方向だけが示され、具体的な方針は明記されていない。今後も視界不良の迷走が続く懸念は強い。

■新聞各紙は議会や政権を批判

イギリス内の混迷ぶりは、現地の新聞各紙の1面トップを見れば明らかだ。議会が離脱協定を否決した後、各紙は次のように報道している。

離脱支持派のサン紙は「またもカオスに突入。国民投票から993日たってもEU離脱に近づいていない」と書き、デイリー・メール紙は「“愚かな下院”がブレグジット遂行の約束を破った」と議会を痛烈に非難した。

一方、野党・労働党寄りのガーディアン紙は「(メイ首相にとり)離脱期限16日前の破滅的な敗北」と強調し、デイリー・ミラー紙は「メイ氏の降伏はイギリスをさらに数カ月のカオスに直面させる」と保守党のメイ政権を批判。また、経済紙のフィナンシャル・タイムズ紙は、「メイ氏はブレグジットの制御を失った」「メイ氏の権威はズタズタに」と、現政権によるEU離脱政策の失敗を厳しく指摘している。

なぜ、これほどまで迷走しているのか。イギリス議会下院が1月に続いて大差で離脱協定案を否決した最大の理由が、アイルランド国境管理をめぐる「バックストップ(安全網)」の問題だ。イギリスがEUから離脱すれば、イギリス領北アイルランドとEU加盟国アイルランドとの国境で何らかの国境管理が必要となるが、検問所などの厳格な国境を設けないことまではイギリスとEUの間で合意している。1960~90年代の北アイルランド紛争のような悲惨な宗派対立の再発を防ぐためだ。ただ、国境管理の具体策については決まっておらず、今後の懸案となっている。

離脱協定案では2020年末までの移行期間の間に国境管理の具体策が決まらない場合、保険的な措置として、具体策が見つかるまで北アイルランドを含むイギリス全体がEUの関税同盟に残ることとした。これがバックストップである。だが、これではEUから離脱したはずなのに、第三国との自由な通商交渉が行えず、半永久的にEUの「属国的状況」が続くことになるとして、議会は1月15日に大差で協定案を否決。そしてメイ首相は3月12日の再採決直前、安全網を時限的な措置とする協定案でEUと合意したが、その法的保証が不十分として再び議会に否決されたのだ。

■今後想定されるシナリオは

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