トランプの「ウソと狂気」が支持される理由 国民が「自由と平等」より重要視しているもの

東洋経済オンライン / 2019年3月27日 10時0分

なぜトランプ政権は生まれ、支持されてきたのか。アメリカという国の思想を筆者が説きます(写真:ロイター)

日本では批判的な報道が目立つトランプ大統領だが、いま大統領選を行えばトランプが再選を果たすと言われるほど、アメリカでは根強い支持者たちに支えられている。

日本人の多くが知らないアメリカ政治の現実と、社会の底流に流れる伝統について、全米ベストセラーとなった歴史書『ファンタジーランド』を読み解きながら、アメリカ政治を専門とする上智大学・前嶋和弘教授が解説する。

■つねに「熱狂」が作り出される国

アメリカ政治を特徴づけているのが、「いかにしてうまくアピールするか」という演出の重視である。選挙はその典型例だ。ニュースで効果的に取り上げてもらうために、徹底的に見せる工夫をする。

スピーチライターによって計算された演説。遊説のときの各候補者の後ろに並べられた支持者の壁。「熱狂」は作り出される。現地調査で遊説の会場を訪れ、妙に積極的な「壁」を見ると、いつも鼻白む。同時に選挙が「メディアイベント」であることを実感する。

政策運営も同じだ。大統領は議会を説得して自分が進めたい政策を立法化してもらうのがアメリカの政治の本来の流れだが、現実は違う。大統領は熱弁を振るい、自分の訴えをテレビ出演の折に繰り返し伝えることで、世論を動かして「搦め手(からめて)」で議会に影響を与えていく。権力分立に不可欠な議会からの牽制を、大統領は演出という「飛び道具」ですり抜けようとする。

トランプ大統領の場合は、テレビだけでなく、ツイッターという「指先介入」を使って、自己演出する。舞台はアメリカでなく世界中であり、日本を含む各国は大統領の280字に一喜一憂する。

演出のためには、派手さは欠かせない。人々が感情移入できるような物語や、場合によっては戦慄の物語も効果的だ。「ウソ」や誇張も当然含まれる。

ただ、虚実が入り乱れて吠え続けるトランプ大統領の大立ち回りは、「アメリカ第一主義」とともに「普通の人の政治」に立ち戻ろうという理念にほかならない。できるだけ派手に、現実性を大きく超える夢のような物語には、この理念を達成しようとする強い想いがある。

一方でこの理念は、アメリカがこれまで築いてきた国際協調や、多様性や寛容という平等主義という理念と真っ向から衝突する。過度なポピュリズムの発露やポスト真実的な言動(つまり「ウソ」)で、国際協調や平等主義を打ち消そうとするのは、一種の狂気でもある。

理念を達成するための虚実が入り乱れる「演出」は「夢物語(ファンタジー)」のようだ。

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