ルネサス、7年ぶり赤字転落でたどる「茨の道」 財務悪化と幹部交代で競争力も失いつつある

東洋経済オンライン / 2019年5月18日 8時0分

新製品開発の代わりに呉社長ら経営陣が力を入れている、買収による規模拡大戦略にもリスクがある。3月末に米アナログ半導体メーカー、IDTを買収したことにより、ルネサスののれんは2018年12月末の1872億円から9108億円へ、一気に増えた。買収に必要な資金として6980億円を借り入れ、自己資本比率は56.7%から34.5%に大きく落ち込んだ。ルネサスは2019年12月期から国際会計基準(IFRS)に移行しているため、のれんを毎期償却する必要はないが、IDTの業績が悪化すれば多額の減損処理を強いられることになる。ルネサスの自己資本は6351億円だ。

買収による業績押し上げ効果もあまり見込めない。IDTの年間売上高は約900億円、営業利益は約120億円だ。この分がルネサスの業績に貢献するが、買収に伴って発生したのれんのうち一定程度は今後、無形固定資産として組み替えられ、この分は償却する必要がある。2017年に買収したアメリカのインターシル(現ルネサスエレクトロニクスアメリカ)の例を参考にすると、償却で約120億円の営業利益はほぼ吹き飛んでしまう計算だ。ルネサス製品とのシナジーが必要だが、すぐにその効果が現れると期待できない。

IDT買収の目的は、商品の幅を広げて競争力を向上させることにあったが、買収自体が「高値づかみ」だとの批判は免れない。呉社長は3月、「いい結婚にするためにこれからの努力が必要」と語ったが、必要な努力はかなりハードルの高いものだ。

「世界で勝ち抜く」を目標に、ルネサス製品の特約店を絞るなどの改革にも着手しているが、欧米型の改革が日本の顧客に受け入れられるかは未知数。先行き不透明感を反映してか、当初春には示すとしていた中期経営計画も「米中関係の影響がわからない」との理由でいまだに発表できずにいる。

日本に残った数少ない半導体企業として輝きを取り戻すために、ルネサスが取り組まなくてはならない課題はあまりにも多い。

高橋 玲央:東洋経済 記者

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