豪華寝台「瑞風」は沿線住民の意識を変えた 経済効果だけでなく住民同士の交流の機会に

東洋経済オンライン / 2019年6月2日 7時20分

すごいのはそこからで、バスが出発し列車が回送されて去っても、集まった人たちは解散しない。宍道駅前には、2016年に新築完成した松江市宍道支所・宍道公民館の複合施設があるが、そこへ移動し茶話会が始まる。施設を利用したカフェが「瑞風」の停車日には開かれ、住民交流の機会が提供されているのだ。

つまり、宍道にやってくる「瑞風」を受け身の立場で歓迎するだけではなく、むしろ積極的に活用し、自分たちの地域を盛り上げるためのチャンスとして利用している。それまでになかった豪華列車が地元の町に停車するようになったという大きな出来事を契機に、観光客のおもてなしだけに終わらず、町としての一体感の醸成に役立てられているのだ。

いつも来る人の姿が見えないと「体調を崩したのではないかねえ?」と、お互い声を掛け合っているそうだ。「『瑞風』が来る日に駅へ行けば、地域の人たちに会える」との意識が生まれたのである。

こうした活動にも、最初はやはり”上からの働きかけ”があったという。「せっかく『TWILIGHT EXPRESS 瑞風』が走り始めるのだから」という意識であり、JR西日本サイドも乗客をもてなしてくれるのなら歓迎という姿勢だった。それが今では「自分たちの楽しみ」として、もっと運行(停車)回数を増やしてほしいとの要望まで寄せられるようにすらなったと、JR西日本は言う。

JR宍道駅自体は、1909年の開業時から残る駅舎を「瑞風」停車を機にリニューアルした。110年の歴史を感じさせる貴重な木造駅舎であるが、設備など基本的な構造は現在も変わりなく、装飾なども、他の停車駅と比べて格別、豪華というわけではない。しかしそこから、当初の思惑など大きく越えた現在のような地域交流へと独自の発展を遂げたのは、ちょうどタイミングよく、新しい宍道支所の建物が完成し、交流の場が駅前にできたことも大きいと、同支所の地域振興課で聞いた。

この支所の前にはコミュニティバスのターミナルも設けられており、町の核として育てようという松江市の方針もうかがえる。それと「瑞風」がうまく合致したのだが、やはり駅前にあればこそであった。これが駅から離れた場所だと、うまくはいかなかっただろう。

■クルーと町民の「交流会」に発展

さらに、町の側の歓迎ぶりは、JR西日本の「感謝」を呼んだという。乗客は運行ごとに変わるが、「瑞風」を運行するクルーは、ある程度、固定されたメンバーが毎回やってくる。回送として宍道を発車する時、最後尾の展望デッキにクルーが集まって、町の人たちと手を振り合うことが恒例行事となっているが、それだけにとどまらない交流も生まれている。

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