生産性は最低賃金を引き上げれば向上するのか 令和は「重い宿題を解決すべき時代」になる

東洋経済オンライン / 2019年6月5日 8時20分

「最低賃金を上げれば生産性が向上する」というのは正しいのか(写真:bennymarty/iStock)

先日、テレビ朝日の情報番組の著名なコメンテーターの方から、「どうして国民に景気回復の実感がないのか」というご質問を受けました。私は「実質賃金が下がり続けているからだ」と答えたうえで、その原因を詳しく説明したところ、大いに納得していただけました。(2015年1月10日の『アベノミクスは消費税5%でも失敗していた』、2019年3月30日『実質賃金下落の本質は国民への「インフレ税」だ』などを参照)

ところが、続く「実質賃金を上げ続ける方法はないのか」というご質問に対する私の答えには、どうにも納得していただけなかったようです。私の答えはもう10年近く言い続けていることですが、「農業、観光、医療などを成長産業として地道に育成し、海外からの需要を底上げしていく」というものでした。即効性のある魔法の杖はないのです。(2012年12月28日の『安倍新政権は農業・観光・医療を強化せよ』、2019年4月4日の『令和時代に国民が豊かになるたった1つの方法』などを参照)

■最低賃金引き上げ「5%×10年」は正しいのか?

それに対して、コメンテーターの方は「実質賃金を上げ続けるためには、最低賃金を5%ずつ10年連続で引き上げればできるはずだ」という意見をおっしゃっていましたが、それは日本の労働生産性が抱える問題点や地方の現状をあまりにわかっていないといわざるをえません。あくまで理屈上では成り立つだけの話であって、経済学を真面目に学んできた人たちが陥りがちな発想だといえるかもしれません。

このように昨今では、最低賃金を大幅に引き上げるべきだと主張する人が増えてきています。最低賃金が低いから生産性の低い仕事の効率化が進まず、付加価値の高い仕事への転換もままならない。だから、生産性が上がらないし、賃金も上がらない。しかし、人件費が上がれば収益は悪化するので、経営者は生産性を高める必要性に迫られるはずだ。最低賃金が低いからこそ、経営が成り立っているような企業は淘汰されるべきだ、という論法なのです。

先のコメンテーターが有力な識者の意見として挙げていた事例が、英国が1999年に最低賃金を復活させて2018年までに2倍を超える水準にまで引き上げたというものです。その結果として、低い失業率を維持したままで英国の生産性が大いに高まったというのです。

しかし現実には、2017年の1時間当たりの労働生産性は53.5ドル、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中では19位と、日本(47.5ドル・20位)と大して変わらない状況にあります。おまけに、英国の物価は日本に比べてかなり高いので、国民の大半が生活水準の悪化に苦しんでいて、政治への不信からEU離脱派とEU残留派に分断し、民主主義の土台である社会の結束が破壊されてしまっています。

■「原因」と「結果」を取り違えている

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング