「自炊塾」、九州大の人気講義は何がスゴいのか 単位をとるのが難しくても学生が集まる理由

東洋経済オンライン / 2019年6月15日 8時10分

煮た大豆をつぶし、麹と塩を混ぜてみそを作る学生たち。みそは各自持ち帰り、家で発酵させて自炊に使う(筆者撮影)

九州大学で2013年から続いている人気の授業がある。その名も「自炊塾」。一般的な食育講座や料理教室とは一線を画した内容で、「履修条件が厳しい」と担当教員や先輩が公言するにもかかわらず、定員25人枠に毎年3~5倍の学生が殺到する。

1年生を対象とした、4月から7月まで全15回の授業。さらに課外授業に4回出席しなければならない。シラバス(授業計画)にはこんな言葉が並んでいる。

・本気で自炊を身に付けたい学生のための実践的授業。自炊経験は問いません
・期間中に40回以上の自炊をこなすこと
・その記録をfacebook「大学生自炊応援団」(非公開グループ)へ投稿し、メンバーと活発に交流し合うこと
・毎週水曜の昼休みにキャンパス内で実施する1品持ち寄り「弁当の日」に参加すること

3カ月で40回なら、ほぼ2日に1回ペースで自炊することになる。大学に入ったばかりの1年生にとっては、なかなかハードルが高いだろう。

「facebookに投稿してもらうのは、自炊を長続きさせるコツ。人に見てもらったり褒めてもらったりすることで頑張れるんです」。そう話すのは自炊塾の担当教員で農学博士の比良松道一さん(持続可能な社会のための決断科学センター准教授)だ。

■自炊にはすごい力がある

2013年に自炊塾を始めた当時、比良松さんは農学部の助教だった。もともと料理は妻任せだった比良松さんが、なぜ自炊塾を始めたのか。

きっかけは2007年『はなちゃんのみそ汁』の著者・安武千恵さんとの出会いまでさかのぼる。

千恵さんはガンのため余命わずかとなり、5歳の娘・はなちゃんに「食べることは生きること」とみそ汁の作り方を教え、33歳でこの世を去った。

「千恵さんの考え方や親子関係に深く感銘を受け、僕は子どもに何を遺せるだろうかと考えました。そして、子どもと一緒に料理を覚えることにしたんです」

毎朝家族で食卓を囲むと決め、6歳の次女がみそ汁を作ってくれて、家族の心身は健やかで笑顔が増えたという。

「自炊にはすごい力がある」と実感した比良松さんは、大学でもやろうと模索。料理研究家などに相談して、授業の中でみそ汁やおかず作りの実演をしてもらうと「もっとやってほしい」と学生の声が高まり、2013年「自炊塾」として本格的な授業をスタートした。

受講生は毎年男女半々くらいで、学部による偏りはなく、全学部から参加しているという。

もともと料理好きな人もいるが、大半は「初心者だけど自炊を身に付けたい」という学生たちだ。

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