箱根の美術館がゴッホの「裏面」にこだわるワケ アクリル板を使った斬新すぎる名画の展示

東洋経済オンライン / 2019年6月15日 8時20分

アクリル板で作られた専用のボックスの中に入れられ展示されているゴッホの「草むら」(筆者撮影)

神奈川県・箱根のポーラ美術館では7月28日まで、ひろしま美術館との共同企画展「印象派、記憶への旅」が開催されている。両館は印象派をはじめとする西洋近代絵画の充実したコレクションを持つことで知られている。

その企画展の第2会場の入り口付近に、額を外し、アクリル板で作られた専用のボックスの中に入れられた1枚の絵が展示されている。この絵はポスト印象派(後期印象派)の巨匠、フィンセント・ファン・ゴッホが描いた「草むら」(ポーラ美術館蔵)という作品だ。その展示のされ方から、まさか本物のゴッホの絵だとは思わずに、素通りしてしまう人も多い。なぜ、ゴッホの名画がこのように展示されているのだろうか。

■なぜ、裏側を見せるのか

ポーラ美術館学芸課長の岩﨑余帆子氏は、「カンヴァスの裏側や側面、絵が張られている木枠もよく見ていただきたいとの思いから、このような展示方法を考案した」と話を切り出す。

岩﨑氏に促されて絵の裏側にまわってみると、カンヴァスの裏面には絵の具が所々に付着しており、木枠にはインクで文字が書かれているのがすぐにわかる。これらの絵の具や文字が何を意味するのか、岩﨑氏はポーラ美術館に就職した当時から興味を持っていた。

その後、十分な調査ができないままでいたが、3年ほど前にひろしま美術館との共同企画展の話が持ち上がったタイミングで、文化財保存修復学を専門とする東海大学の田口かおり講師の協力を得て、蛍光X線分析装置等を用いた本格的な調査が行われることになった。そして、この調査の結果、さまざまなことが判明し、今回の企画展では、その成果を一般の来館者にもわかりやすく展示することになったのだ。

カンヴァスの裏側をさらによく見てみると、半分よりやや下のあたりに集中して、黄色い点や草を表すような緑色の絵の具が、かなり激しく付着しているのがわかる。

「これは明らかに木枠を外し、ほかの絵と重ねていた痕跡だ。絵を描いた後、絵の具が乾かないうちに絵を重ねて保管していた、または絵を売るためにパリで画商をしていた弟のテオ(テオドルス・ファン・ゴッホ)に、ほかの絵と重ねてすぐに送った可能性がある。いずれにせよ、ゴッホの制作状況を知る手がかりになる」と岩﨑氏は話す。

今回の調査では、この付着した絵の具がゴッホのどの作品のものなのかを特定しようと試みた。実は、「草むら」がいつ描かれたのかについては説が分かれているのだが、「草むら」に重ねられていた作品がわかれば、制作時期の特定に向け、大きな手がかりになる。

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