老後資金「2000万円騒動」の本質は何なのか 年金改革先送りは形を変えた「利益誘導策」だ

東洋経済オンライン / 2019年6月15日 7時30分

そもそも自民党は1955年の結党以来、利益誘導を武器に政権を維持してきたと言ってもいい政党だ。高度経済成長初期の時代には、田中角栄氏に象徴されるように日本中に新幹線や高速道路を造ったり、さまざまな公共事業を行うことで有権者の支持を獲得、維持してきた。

自民党を支持する医師会や建設業界、農協などの業界団体が集票力を増すと、業界団体と自民党と官僚組織が強く結びついた「政官業の鉄の三角形」と呼ばれる政権維持の仕組みが確立され、予算や補助金を業界に流すことで強固な権力基盤を構築した。

こうした利益誘導による権力維持を可能にしたのが経済成長だった。経済が成長することで税収が入り、それを原資に予算を増やし続けることで、支持団体への利益誘導が可能になったのだ。

ところが1990年代初めのバブル経済崩壊で、この仕組みが維持困難になってくる。経済成長が止まり、かつてのような税収増がなくなってしまった。しかし、その後も自民党政権は予算を増やし続けてきた。足らざる財源を赤字国債で賄ってきたことは言うまでもない。

同時に、自民党を支えてきた業界団体などの弱体化も始まった。価値観の多様化や生活様式の変化などで企業や組織に対する人々の帰属意識が弱まってきた。その結果、いわゆる組織票が急速に減り、自民党は業界団体を当てにした選挙ができなくなったのである。

そこで新たなターゲットの1つになったのが高齢者だ。2017年の総選挙の投票結果を見ると、世代別投票率は20代が30%台、30代が40%台、40代が50%台、50代が60%台、そして60代が70%台と、きれいに右肩上がりとなっている。有権者数も釣り鐘型の人口構成を反映して、高齢者に比べて若い世代は少ない。

つまり政党にとって高齢者世代は最大の票田となったのだ。選挙に勝つため、高齢者にターゲットを絞り、年金や医療、介護などの制度を優遇する個人給付型の利益誘導を打ち出した。それが「シルバー民主主義」と呼ばれる高齢者に手厚い政治である。

しかし、この現代版利益誘導政治が大きな問題を抱えていることは言うまでもない。かつてのような経済成長という原資がないにもかかわらず、バブル経済崩壊後も果てしなく財政拡大路線を続けている。その結果は、財政の危機的状態である。

■財制審は金融庁報告よりはるかに厳しい批判

昨年11月に財政制度等審議会が出した「平成31年度予算の編成等に関する建議」は、一般政府債務残高が対GDP比238%に達したという数字を挙げて、「平成という時代は、こうした厳しい財政状況を後世に押し付けてしまう格好となっている」「将来の世代はそのツケを負わされ、財政資源は枯渇してしまう。悲劇の主人公は将来の世代であり」などと徹底した政府批判を展開している。

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