日本は、なぜホルムズ海峡で標的になったのか 安倍首相の米・イラン仲介外交は台なしに

東洋経済オンライン / 2019年6月15日 7時40分

13日、攻撃されたタンカーから立ち昇る黒煙(写真:ISNA/ロイター)

アメリカとイランの緊張緩和に向け、イラン最高指導者アリー・ハメネイ師と安倍晋三首相が会談した13日、ホルムズ海峡近くで日本の海運会社が運航するタンカーなど2隻が攻撃を受け、軍事衝突の危険性がさらに高まる事態になった。タンカーに対する攻撃は、アラブ首長国連邦(UAE)沖で5月に起きた事件に続くもので、アメリカ政府はいずれもイランが関与したとの見方を示している。

どちらの事件も犯行声明は出されておらず、イランの犯行を示す決定的な証拠もない。ただ、アメリカ政府による経済制裁強化に反発するイランは、かねて「必要があればホルムズ海峡を封鎖する」と警告しており、一連の攻撃は、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡に対する生殺与奪の軍事力を保持していることを誇示したいイランの思惑に沿う。

イランやその関連組織の犯行だとすれば、アメリカがイランへの圧力を強めている限り、今後もタンカーへの攻撃が続く可能性がある。人的被害や原油の大量流出、船舶の沈没といった事態になれば、軍事衝突の危険は一気に高まりかねない。

■アメリカは「イランの犯行」

東京の海運会社「国華産業」が運航するタンカーは、2回にわたって執拗に攻撃を受けており、2回目の攻撃では乗組員が飛来物を目撃したという。アメリカ中央軍は、イランの精鋭部隊である革命防衛隊の巡視艇とされる小型船舶が爆発から約9時間後にタンカーに横付けし、船の側面に取り付けられていた吸着型機雷を除去したとする映像を公表した。不発に終わった機雷を証拠隠滅のために持ち去った可能性があるという。

映像は白黒で革命防衛隊かどうかも不明だが、吸着型機雷を除去する手際のよさは、実際に取り付け方に熟知していることをうかがわせる。というのも、磁石式とみられる吸着型機雷は、無理に引き剥がすと爆発するおそれもあり、第3者が取り付けた場合、慎重に処理する必要があるためだ。

アメリカのポンペオ国務長官は13日の記者会見で、軍事情報や使われた兵器、イランの行動様式から判断して、今回のタンカー攻撃はイランの犯行とアメリカ政府が見ていることを明らかにした。

これに対し、イランの国連代表部は「アメリカの根拠なき主張を断固として認めない」と反発。ザリフ外相もツイッターで、「ハメネイ師と安倍首相が包括的かつ友好的な会談を行っているさなかに起きた」とし、イランは関与していないと主張した。両者の主張は真っ向から対立しており、安倍首相の仲介外交の努力は台なしになった格好だ。
 
筆者もイランの犯行と決め付ける材料は持ち合わせていないが、イランによる犯行の可能性が高いのではないかと考えている。タンカーが攻撃を受けたのは、イラン沖約50キロの海域で、近くにはイラン南部ジャスク港がある。革命防衛隊は、多数の小型高速艇を配備し、ホルムズ海峡付近の海域を熟知している。5月にUAE沖で起きたタンカー攻撃とは異なり、今回の事件は、いわば革命防衛隊の「縄張り」ともいえる海域で起きている。

■根強い「陰謀論」説

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