なぜ政府も野党も最低賃金を無理に上げるのか 「年5%賃上げ10年連続」はやるべきではない

東洋経済オンライン / 2019年6月26日 8時10分

最低賃金は2016年から3%程度の引き上げが続いてきたが、経済財政諮問会議は引き上げペースを加速する方向へ舵を切った。しかし日本の社会と経済に重大な悪影響を及ぼす恐れがある(写真:共同通信)

■「生産性を高められない企業は消えよ」は正しいのか?

政府が今年6月21日に閣議決定した経済財政運営の基本方針「骨太の方針」では、最低賃金の水準について「より早期に全国平均で1000円に引き上げる」という目標を掲げています。過去3年間の最低賃金の引き上げ幅は年3%としてきましたが、今後はその引き上げ幅の拡大を促していくということです。

具体的な引き上げ幅は明記していないものの、政府や与党の念頭には「5%」という数字があるのは間違いないでしょう。

「最低賃金を大幅に引き上げるべきだ」と考える識者が増えてきている中で、政府内では菅義偉・官房長官が、経済財政諮問会議の民間議員では新浪剛史・サントリーホールディングス社長が「5%程度を目指す必要がある」と主張しています。

これに対して、世耕弘成・経済産業相は中小企業の人件費負担を考慮し、「3%程度で検討すべき」と反論していますので、政府内で意見が一致しているわけではありません。それでも5%引き上げ論が優位であるのは、政府・与党内でそう考えている人たちが多数派であるからです。

この5%という数字の背景には、「最低賃金を5%ずつ10年連続で引き上げれば、日本の生産性は高まるはずだ」という考え方があります。最低賃金の引き上げ幅を拡大すれば、日本で大多数を占める中小零細企業は、生き残るためにいやが応でも生産性を高める必要性に迫られるからです。その挙げ句に、生産性を高められた企業は存続できるし、高められなかった企業は淘汰されてしかるべきだという思考回路が働いているのです。

日本生産性本部の「労働生産性の国際比較」によれば、2017年の日本の1時間当たりの労働生産性は47.5ドル(購買力平価換算)であり、経済協力開発機構(OECD)加盟36カ国の中では20位と下位に位置しています。さらには、この労働生産性の水準はアメリカ(72.0ドル)やドイツ(69.8ドル)の3分の2程度にすぎず、先進7カ国の中では最下位の状況に甘んじているのです。これから人口減少が加速していく日本では、生産性の向上が不可欠であるという意見に対して、異論を差し挟む余地は少ないでしょう。

先進国にしても新興国にしても、大規模の企業が中規模の企業より、中規模の企業が小規模の企業より生産性が高いという傾向に変わりはありません。日本の生産性が先進7カ国の中で最も低い理由は、企業全体に占める小規模企業(零細企業)の割合が最も高い状況にあるからです。卸売業・小売業・飲食業などで従業員が5人以下、製造業・建設業・運輸業などで従業員が20人以下の小規模企業は、日本の企業全体の90%近くを占めていて、実に雇用全体の25%も担っているのです。

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