熊本県の温泉郷で「地獄を見た」3兄弟の奮闘 「熊本で最も最悪な土地」の復興を目指して

東洋経済オンライン / 2019年7月9日 17時0分

熊本地震直後の土石流で被害を受けながらも、再建の道のりを歩んでいる。左から、熊本県南阿蘇村・地獄温泉「青風荘」経営者、河津進さん、謙二さん、誠さん(写真:GARDEN Journalism)

2016年4月に九州地方を襲った熊本地震直後の土石流で、壊滅的な被害を受けた熊本県南阿蘇村の地獄温泉「青風荘」(「清風荘」から屋号変更)。100年以上続くこの宿を失ってはいけないと、先代から引き継いだ河津3兄弟が歯を食いしばって1歩1歩再建への道程を歩んできた。ずっと応援してきた。しかしそこに、また大雨の被害が襲ってきた。

熊本県南阿蘇村の温泉郷、垂玉、地獄温泉。古くから湯治場として栄え、200年以上を経た今も人々に愛され続けてきた。江戸時代には、熊本藩士のみに入浴が許されたという格式もあり、傷ついた体を癒やす秘湯として知られる名高い温泉だ。

■復興に向けて奮闘する温泉郷

しかし、2016年6月、地震後の大雨によって源泉を囲む山々が崩れ大規模な土石流災害が発生。泥と岩と木々とで真っ黒になった濁流が温泉郷を飲み込んだ。発生から10カ月が経過した今も山肌から水が道路に染み出し、アスファルトの亀裂を広げながら土地を傷め続けている。

「熊本で最も最悪な土地だ」と、地元の被災者は嘆く。

地域のシンボルでもある温泉郷。140年以上の歴史を守ってきた老舗旅館「青風荘」は壊滅的な被害を受けた。旅館の経営者、河津誠さん、謙二さん、進さん3兄弟は自分たちの代で旅館を終わらせてはならないと復旧、復興に向け奮闘を続けている。

旅館は地域の人たちの雇用の場にもなってきた。自分たちが復興しなくては地域の復興にもつながらないと奮闘してきたが、被害の深刻さに時折本音が深いため息とともに漏れた。

3年前に初めて「青風荘」を訪ねた。泥に覆われ巨大な岩に視界を遮られ、歴史ある建物が無残に崩れかけている様子に絶句した。自慢の大浴場は屋根が落ち膝の高さまでの泥に覆われた。場所によっては人の背丈ほどの高さまでの土砂が堆積し手のつけようがなかった。土石流の威力が恐ろしかった。それでも河津兄弟は前を向いた。たくさんのボランティアが、かろうじて残された建物の泥かきをした。

そして今、2020年春の開業を目指し再建作業が進む。

■目の前の景色は災害の結果ではない

料理人で三男の進さんは初めての取材でこう言った。「堀さん、しっかり撮ってください。目の前の景色は災害の結果ではない。僕らの始まりです。起点をしっかり記録してください」。崩落した山、寸断された道、泥にまみれた母屋。目を背けず撮ってよかった。それは今、本当に起点だったんだと思えるから。

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