「教育虐待」に気づかない教育熱心な親たちの闇 親から子への「ソフトコントロール」にご用心

東洋経済オンライン / 2019年7月12日 7時20分

「あなたのため」という大義名分に闇が隠れています(写真:Ushico/PIXTA)

■中学受験生を父親が刺殺

「しつけ」「教育」と称して子どもを罵倒し、暴行し、死に至らしめる事件が後を絶たない。

2018年3月に父親によって殺害された東京都目黒区の当時5歳の女児は、「朝4時から勉強する」などしつけと称して5歳には到底無茶な約束をさせられ、それが守れないと暴行されるという悲惨な生活を送っていた。

2016年8月には、名古屋で、当時12歳の男児を父親が包丁で刺し殺す事件が起きた。父親は日ごろから息子の中学受験勉強を熱心に見ており、自分が命じた勉強をしていなかったからという理由である。

この事件については現在、名古屋地方裁判所で公判が開かれており、事件の前日には息子の太ももを包丁で刺していたことが車のドライブレコーダーの記録から明らかになっている。公判で明らかにされたやりとりが生々しい。

息子の太ももを包丁で刺しながら、「刺すって言ったはず!」「俺が書けって言えば、死ぬほど書け。覚えろって言ったことはぜんぶ覚えろ!」と怒鳴りつけていたのだ。ただし、被告人は殺意を否定している。7月19日に判決が言い渡される予定だ。

極めて異常に思えるだろう。しかし私がこれまで取材した、いわゆる「教育熱心な家庭」のなかでも、殺意の象徴として包丁が登場するケースが複数あった。紙一重のところで、かろうじて踏みとどまっているのだ。

「教育虐待」という言葉をご存じだろうか。

「教育虐待」とは、「あなたのため」という大義名分のもとに親が子に行う、いきすぎた「しつけ」や「教育」のことである。

もともとは家庭から逃れてきた子どもを保護する「シェルター」の職員たちが、「あの親は、教育という名のもとに虐待しているよね」というような文脈で使っていた。それが2011年12月「日本子ども虐待防止学会」で「子どもの受忍限度を超えて勉強させるのは『教育虐待』になる」として発表された。

「教育虐待」という言葉は、ここ数年でメディアでもたびたび見られるようになった。では教育虐待自体がいま増えているのか。

はっきりしたことはわからない。教育虐待のような事象は昔からあった。しかし昨今では、その構造が複雑化していることこそが問題だと思われる。

高度成長期の「教育ママ」は子どもを有名大学に入れることだけを考えていればよかった。「もやしっ子」と呼ばれようが、テストでいい点数をとれる子を育て、「高学歴」というパッケージ商品を得られれば、それだけで満足できた。

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