母娘を6年間引き裂いた衝撃の「誘拐犯」の正体 火災で「死亡した」はずの娘をさらったのは…

東洋経済オンライン / 2019年7月12日 8時30分

あの日、ルースの家を訪れたキャロリンは、火災発生直前に、2階のトイレに行くふりをして、ヒーターの前にスプレー缶を置いた。高熱によって、破裂・引火する「時限式発火装置」の役割を果たしたと思われる。

爆発音と火災、その混乱に乗じて、ベビーベッドに寝ているデリマールを、キャロリンは何らかの方法で連れ去ったのだ。

その後、キャロリンは「自宅で出産した」とする出生証明書を偽造。赤ちゃんをアリーヤと名付け、周囲に気づかれることなく、近所でも評判のよき母を演じ続けていた……。

■誘拐犯に奪われた娘を取り戻せ! 

パーティー会場でアリーヤに近づくルース。本当は今すぐ抱きしめたい……でも、どうすれば誘拐犯・キャロリンの手から娘を取り戻せるのか。このとき、ルースの頭に思い浮かんだのが、テレビで見た刑事ドラマの1シーン。ちょうど事件捜査にDNA型鑑定が導入された頃だった。

「ねえ、髪の毛にガムがついているわよ。取ってあげるわね」ととっさに嘘をつき、ルースはアリーヤの髪の毛を引き抜いた。DNA型鑑定をすれば親子関係を証明できると考えたのだ。

しかし、警察は捜査対象ではない人間の鑑定を受け入れてはくれなかった。自費による高額な専門機関での鑑定を勧められたが、困窮するルースには不可能。

さらに当時の技術では「毛根」が必要で、途中で切れている少女の髪の毛では鑑定自体が不可能だったのだ。

途方にくれるルースが町を歩いていたとき、目に留まったのは選挙活動中の州議会議員、エンジェル・クルーズだった。「自分を助けてほしい。私の話を信じてくれないか」。直談判を試みたルースの情熱に、同じヒスパニック系のルーツを持つ州議員の心が動いた。娘を失ってから6年……。ルースにとって初めて、自分の話を信じてくれた人物が現れた。

クルーズ議員はすぐに検察へ“事件”の再捜査を依頼する。そしてついに、警察がデリマール捜索に動き出した。

■絶対に諦めなかった母の執念が生んだ奇跡

「私の30年の経験の中で、最も難しく、最も記憶に残る事件でした」。そう語るのは、地元警察の元捜査官、マイケル・ボイル。「精神的におかしくなってしまった母親」として、警察にも知られていたルースの話を最初に聞いた一人だ。

「私はあの火災を覚えていました。ルースの話には説得力があり、非常に引きつけられるものでした」

警察による6年前の火災の再検証が始まり、さまざまな事実が明らかになった。

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