スマホで敗れた「ノキア」が再び復活できた理由 大変革を率いた現役会長が語る激動の日々

東洋経済オンライン / 2019年7月14日 7時40分

一方、アップルは「iPhone」というまったく新しい製品から始めたため、通信会社のことを気にする必要はなかった。アップルIDの仕組みを作り、アプリストアを作った。ちなみにアプリストアの仕組みを最初に発明したのはノキアだ。いまだにアップルからは特許使用料が支払われている。

アップルはそうした仕組みを受け入れないなら、iPhoneを売らせないという姿勢だった。ただエンドユーザーがそれを求める以上、通信会社は扱わざるを得ない。このように新参者がルールを変えてしまう現象は今、どんな業界でも起こっている。

■取締役会が機能しなくなっていた

――著書の中では、当時の取締役会の機能不全を指摘しています。

iPhoneやアンドロイドスマホが席巻し、ノキアのシェアが落ち始めた頃を振り返ると、現場の社員が把握していたスマホ市場に不可欠な情報を、単純に経営層が知らなかったことが大きい。成功にとりつかれた組織では、悪いニュースは上へと流れていかない。

例えばインドでは今、SIMカードを複数搭載できる「デュアルSIM」のデバイスが人気だ。時間帯によって、通信料金が安い方のSIMカードにボタン1つで切り替えられる。だがノキアの研究開発部門や経営陣は、費用がかかって利益を押し下げるとして対応しなかった。競合がデュアルSIMの製品を投入し、ノキアのシェアは激減した。経営層の耳に消費者の声が届かない組織構造になっていた。

――会長就任後、そうした問題をどのようにして解決したのですか。

まず自分自身にさまざまな問いかけをする。取締役会であれば、「われわれは株価やメディアの言うことばかりを気にしていないか?きちんと競合状況やテクノロジーの根本変化について話しているか?」といった具合だ。

次に、こう考える。「われわれは物事について正しいやり方で議論しているか」。穏便に済ませようとするのではなく、互いを信頼し、ネガティブなトレンドやニュースに向き合おうとしているか。誰かが悪いニュースを報告したら、微笑んで、感謝をする。そうしなければ、誰も悪いニュースを報告してこなくなる。

そして最後に、「われわれの組織の中には誰でも異議を唱えられる環境があるか」と問う。CEOにどうやって異議を唱えるか。これは日本の企業文化でも難しいことだろう。

こうした議論の環境を作るのに重要なのが、私が「パラノイア楽観主義」と呼ぶものだ。パラノイアのような健全なレベルの用心深さと恐怖心に加え、経営に関する複数のシナリオを考え、前向きで先見性のある展望を併せ持つという考え方だ。

■マイクロソフトへの事業売却の舞台裏

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