「日韓関係崩壊」で笑うのは中国だという皮肉 アメリカの無関心さが最悪な事態を招いた

東洋経済オンライン / 2019年7月17日 7時40分

今回、日本政府は、半導体やディスプレーの材料となる感光材など3品目の輸出業者に対して、韓国への輸出には個別に許可申請の提出を求めるという措置は、自由貿易への制限ではなく、国際法にも矛盾していないと主張している。日本側は韓国企業が事実上、こうした化学物質の利用を管理できていない可能性がある事例を引き合いに出している。

こうした主張は、アメリカでは相当懐疑的に見られている。この危機を引き起こした責任が文政権にあると認識する人々ですらそうだ。日本側は、これは報復措置ではなく、徴用工問題に直接関連していないと主張してきた。しかし、日本の外務省職員からアメリカの記者へ送信された輸出規制を警告するメールには徴用工論争に関するファクトシートも含まれており、これらの問題がつながっていないとする日本側の主張は信頼性を欠く。

ニューヨーク・タイムズ紙は15日、日本の輸出規制とトランプ大統領による鋼鉄やアルミニウムなどへの安全保障を理由として課された関税を比較した長い記事を掲載した。同記事は、輸出規制について韓国は日本の貿易の“政治化”による被害者であるとする文政権の主張を踏襲している。

日本側はこうした報道を不服に思っており、日本の行動が批判にさらされつつあることを意識している。しかし、「政策は政治家が主導するのであり、外務省や経済産業省の官僚ではない」と、安倍首相の国家安全保障会議と協力関係にある日本のある専門家は述べている。実際、官僚間では今回の規制を間違っていたと見る向きも少なからずあるようだ。

同様に、文大統領は韓国の企業や政治家に対して、日本に対する国家主義的なレトリックに協力するよう圧力をかけているが、韓国内には、これも悲惨な間違いだと考える声が多くある。「日韓関係の下降スパイラルが続くことも懸念している」と、日本で密接な関係を維持している元韓国高官は自信を持って語った。「できるだけ早く最高レベルの外交努力が必要だ。しかし、現時点では双方がそうする準備ができていないように感じる」。

■一般国民はまだ日本とのいい関係望んでいる

元韓国高官は、慰安婦合意を廃止し、日本の企業資産を押収する文政権の動きに反対した。それにもかかわらず、日本が経済的報復を行うことは、日本が主導するリベラルな国際システムを弱体化させかねない、とこの高官は懸念する。

「もちろん、韓国でも国際社会でも日本のいいイメージが損なわれるだろう」と、この高官は語る。「韓国はまだ、日本との貿易戦争を始める準備が整っていない。一般の国民は日本とのいい関係を望んでいる。しかし、日本の行動が韓国にとって経済的な苦難につながれば、たとえ韓国が再び保守政権になったとしても、両国関係の立て直しは難しくなるだろう」。

こうした中、気になるのがアメリカ政府の動きだが、「アメリカ政府が真剣にかかわることはないだろう」と、かつて日本の外務省で高官を務めた人物は話す。「真剣に取り組んでいたとしても、成果は得られないのではないか」。

それでも、アメリカの韓国政府への影響力は依然大きい。文大統領は、トランプ大統領の北朝鮮外交を何としても成功させたいと思っている。そして安倍首相は、参院選が終わり、アメリカとの貿易交渉が新たに始まれば、トランプ政権に逆らうことはないかもしれない。少なくとも事態の悪化を阻止し、外交のための時間稼ぎをする機会は残されている。しかしそれも、権限を持った外交官がアメリカにまだいればの話だが。

ダニエル・スナイダー:スタンフォード大学教授

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