異色の「自転車列車」、愛好者と育てる手作り感 房総に人を呼び込む「B.B.BASE」の秘密

東洋経済オンライン / 2019年7月18日 7時0分

縦置きラックのアイディアは、偶然にも209系のドア配置に合っていた。ボックスシートを配置すると、ドアと背もたれの間のスペースがちょうど標準的な自転車の高さと同じになり、ドア部に大きく干渉することなく縦置きできたのだ。さらに、座席を4+2人の配置にしたところ、1人分の座席幅がロードバイクの車体幅と一致。各座席の裏に1台ずつ搭載できる、理想的なレイアウトとなった。

「まるで、最初から自転車を搭載するために設計されたような寸法でした」(利渉氏)

■乗客とともに創るB.B.BASEのコンテンツ

こうして完成したサイクル専用車両は、総座席数99席。床にはビンディング付きシューズに対応するゴム製の滑り止めが敷かれ、各座席には飲食も可能なテーブルとスマートフォンなどを充電できるコンセントが設けられた。4号車は一部の窓と乗降扉を撤去してフリースペースとし、大型液晶モニターが配置された。列車名は「B.B.BASE(BOSO BICYCLE BASE)」と決まり、2018年1月6日から運行が開始された。

現在、「B.B.BASE」は週末と祝日を中心に運行され、両国駅地平3番ホームから発着している。すべて旅行商品として扱われ、インターネットかびゅうプラザで、前日18時(または営業時間内)まで予約可能だ。

車内には、B.B.BASE専任のクルーが乗務している。JRから委託を受けた外部スタッフで、房総地域の観光や、自転車についての豊富な知識を有している。往路の車内では、おすすめコースを紹介するブリーフィングが行われるが、ここで紹介されるコースはすべてクルーによる手作り。復路の車内で「南風が強く、向かい風で大変だった」と言われれば、翌日の運行ではその情報を注意事項として盛り込むといった具合に、乗客からの聞き取りによって毎回細かくアップデートされている。

「案内担当の車掌が乗務していないので、車内保安要員としてのほか、車内でも楽しんでいただけるよう配置しました。単に観光案内だけでなく、自転車の知識が豊富なクルーと契約して、現地で自転車にトラブルが生じた場合も対応できるようにしています」(利渉氏)

【2019年7月19日12時10分 追記】記事初出時、利渉氏の発言内容に誤りがありましたので、上記のように修正しました。

この結果、B.B.BASEはJR東日本の観光列車としては異例とも言えるほど、手作り感覚にあふれた商品になっている。1日サイクリングを楽しみ、帰りの列車に乗車すると、サービスやサイクリングコースについてのアンケートが配られる。通常ならアンケートは回収されて終わりだが、B.B.BASEは内容を確認したクルーが乗客のもとを訪れ、質問に回答したり、より詳しい情報について尋ねたりする。これが「みんなで作る列車」という空気を生み出し、熱心なリピーターの獲得につながっている。

■「オープンソース」の観光列車

乗客自ら新たなサイクリングコースにチャレンジし、フィードバックしてくれるケースも多い。一度参加した乗客が、「面白かったから」と別の仲間や初心者を連れて来るケースもある。また、地域の広域連携も当初の想定以上に広がっている。元は千葉県限定の企画だったが、佐原コースの設定をきっかけに、近年は茨城県との連携も進んでいる。

サイクリスト専用の列車と思われがちなB.B.BASEだが、その実態は、乗客とクルーが一緒になってコンテンツを日々成長させていく、言わば「オープンソース」の観光列車だ。自転車を持っていなくても、両国駅で自転車を借りることができるので(要予約)、この夏、暑さ対策をして参加してみてはいかがだろうか。

栗原 景:ジャーナリスト

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング