山寺宏一「同業者から見ても凄い」圧倒的な実力 銭形警部から犬まで演じ分ける「七色の声」

東洋経済オンライン / 2019年7月20日 18時0分

声優は、実は声の良しあしだけではありません。声優・山寺宏一さんを通して見えてくる、演じる姿勢のすごさとは?(写真:Jun Sato/WireImage/Getty Images)

昔と違って、最近は地上波のテレビ番組に出ることも珍しくなくなった「声優」という仕事。声優業界に憧れる若者は多くいますが、いったいどんな世界なのか? 

今回は「声優・山寺宏一の実力」について、フリーザやばいきんまんなど数多くの人気キャラクターの声を担当する中尾隆聖氏が上梓した新著『声優という生き方』から抜粋して紹介します。

設定情報の多い少ないは別として、声優が役づくりをするにあたって、とくに経験の少ない人が陥りがちなのが、役に合わせて「声をつくってしまう」ことです。

例えばおじいちゃんの役だったとすると、しわっしわの声にして、「わしはのう」なんて言ったりする。それだと「おじいちゃんなんだな」と思われても、単なるステレオタイプな記号でしかありません。おじいちゃんにもいろいろあります。

温厚な人もいれば、怒りっぽい人、背筋がピンとしている人、性別がわかりにくい人、早口な人、無口な人。こういう人物であるから、こういう口調にする、とならなければいけない。

■まず必要なのは「役づくり」

「声をつくっただけでやった気になるな」というのはよく言っています。まず芝居があって、そこに必要な声を出すという順序でないとなりません。だけど、声優志望の人たちは「声をつくること」で役づくりを終えてしまいがちです。

この仕事をしていると、声優というのは「いろんな声が出せる人」と世の人々に思われているんじゃないかと感じることがあります。もちろん、山寺宏一さんのように「七色の声」といわれるような声帯を駆使した声の達人はいます。

しかし、彼であっても演技においては声をつくるのは二の次でしょう。まず役をつくってから声をつくる。声をつくらなくても、口調やトーンで人物は演じ分けられます。

しかし、「ばいきんまんにそれを言われても、いまいち説得力がない」、というのが困ったところです。実際、ばいきんまんはものすごく「つくった声」なんです。

それこそ初期の頃は「このままじゃ声が潰れる」と思うくらい、無理な声の出し方をしています。若いうちに声帯を酷使してしまうのもよくありません。野球で言えばストレートを投げられるようにしてから変化球を投げろということです。

「声優=いい声」というのも世間のイメージとしてはありそうです。しかし、「いい声」というのも漠然としていますね。私なんかが思ういい声は、大平透さん(ハクション大魔王などの声を担当)、若山弦蔵さん(ショーン・コネリーの吹き替えなどを担当)、野沢那智さん(アラン・ドロンなどの吹き替えを担当)とか、ダンディーでかっこいい、渋い人たちを想像します。

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