農協がいま、投資信託の販売に本気になるわけ ベテラン証券マンと挑む一大プロジェクト

東洋経済オンライン / 2019年8月6日 8時0分

農林中央金庫はいま、全国の農協を通じて投資信託の販売に本腰を入れようとしている(記者撮影)

「農林中金に出向してくれないか」

中堅証券で30数年間、証券マンとして働いてきた松澤國久さんが、会社からそんな打診を受けたのは2017年秋のことだった。

農林中央金庫はいま、証券5社から松澤さんのようなベテラン証券マンをかき集めている。農林中金が初めて挑む、ある一大プロジェクトを担ってもらうためだ。

■サポートプログラムを通じて投信販売に本腰

「資産形成サポートプログラム」と名づけられたそのプロジェクトは、農林中金が全国の農協(JA)を通じ、本腰を入れて投資信託を販売するというものだ。

しかも、ひととおりの商品と販売員を単にそろえるのではない。売り手の都合で商品を回転売買させず、顧客の事情やニーズに合った資産形成を促していく。

老後資金2000万円問題やかんぽ生命による不適切販売などによって、金融商品販売に注目が集まっている中、全国の農協がいま、投信販売の世界に恐る恐る踏み出そうとしている。

松澤さんらは、全国各地のJAで投信の販売を担当するJA職員のOJT教育を担う。3人1組でチームを組み、3カ月ごとに全国各地のJAを指導して回る。いわば投信販売員の“養成請負人”だ。

農林中金は松澤さんのようなベテランを60歳までは出向者として受け入れ、それ以降は彼らを直接雇用に切り替える。現在36人が活動しており、今年10月には総勢45人に増える。

■「貯蓄から投資へ」はなぜ根づかないのか

神奈川、島根、長野と全国各地を回ってきた松澤さんの表情は満足げだ。「証券会社時代は次々と新しい投信をつくり、それを販売するために前の投信を売却する短期売買、商品ありきの販売が多かった。JAバンクの考え方はその逆で、顧客のニーズを捉えて商品を提案する。今までできなかった理想の仕事ができている」と話す。

松澤さんは現在59歳。証券会社時代はリテール営業に長らく携わり、支店長を務めたこともある。それゆえに証券会社の文化や行動パターンを熟知している。「貯蓄から投資へ」というスローガンが長らく掲げられてきたが、日本で投資文化がなかなか根づかないのはなぜか。

【2019年8月7日12時38分追記】初出時の記事における、松澤さんの所属会社に関する記述を上記のように修正いたします。

松澤さんは「証券会社では高い目標が必達で、それを売り切る文化があった」と振り返る。株式であれば、日計り(ひばかり)といって、その日のうちに決済するのが美徳で、顧客にとっていい金融商品でも、益出しのためにその日のうちに売却してしまう。

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