子どもの時に覚えた外国語はどの程度残るのか バイリンガルになるかは"子ども自身"が選ぶ

東洋経済オンライン / 2019年8月14日 11時0分

こうして、園や学校で長い時間使う言語は、語彙も表現も豊かに、口もよくまわるようになり、その言語こそが自分の気持ちを最もうまく表現できる「私の言語」になっていきます。一方、家族との間でしか使われない言語は、元は母語だったとしても、語彙も増えず、口から滑らかに出てくることもなくなり、そうやっているうちに本当に話せなくなることもあります。

1人の親につき1つの言語というやり方は、子どもをバイリンガルに育てるには最良の方法とされてきました。ただ、そのような親の気持ちとは別に、子どもは子どもで、自分なりに、その言語の必要性が維持のコストに見合うものかどうかを見極め、言語を選んでいるのです。

■子ども時代に経験した言語はどうなるのか

バイリンガル環境で育てても、子どもは自分の必要性に照らして一方の言語だけを選んでいくのだとすれば、その選ばれなかった言語は、結局、子どもの中に何の痕跡も残さずに消えてしまうのでしょうか。

あるいは、小さいときに新しい言語の環境に移り住んだことで、その新しい言語のほうが「私の言語」になってしまい、元の母語は使わなくなった、忘れた、という場合も、その"元母語"の記憶はきれいさっぱり消えてしまったということなのでしょうか。

この問題をめぐる知見は割れています。

まず、国際養子縁組で韓国からフランスにやってきた子どもたちが、そのままフランス語だけの環境で成長したところで、子どもの頃の韓国語経験の影響が残っているかを調べた研究があります。この子どもたちは3~8歳のときにフランスに渡りました。そして調査時の20~30代のときには全員が韓国語のことを覚えておらず、彼らの話すフランス語にはまったく外国語なまりがありませんでした。

テストしてみると、韓国語では区別するけれどフランス語では区別しない音の聞き分けはできず*2、韓国語を聞いたときの脳の反応も、ほかの知らない外国語を聞いたときと変わりませんでした*3。

つまり子ども時代に使っていたはずの言語は、今や彼らの中にまったく残っていないようだったのです。

その一方で、子ども時代に経験した言語の痕跡が残っていることを見いだした研究*4 もあります。この研究が調べたのは、6歳頃まではその言語を話したり聞いたりする機会があったけれど、学校にあがってからはあまり使わなくなり、高校や大学に入ってから授業でまたその言語について学ぶようになった、という人たちです。

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