旅行大手HISも参入、「パーム油発電」の危うさ CO2排出は火力並み、FIT制度揺るがす

東洋経済オンライン / 2019年8月21日 8時0分

HISの子会社が宮城県角田市で建設を進めるパーム油発電所(記者撮影)

熱帯雨林などのエコツアーに熱心で、「地球環境の保全」を標榜している大手旅行会社エイチ・アイ・エス(以下、HIS)が、環境保護団体からの厳しい批判にさらされている。

FoE JAPANなど国内外の環境保護団体は7月30日、HISが子会社を通じて宮城県角田(かくだ)市で計画を進めているパーム油を燃料としたバイオマス発電事業からの撤退を求める署名約14万8000筆を同社宛てに送付した。

同日の記者会見でFoE JAPANの満田夏花事務局長は、「パーム油発電は熱帯雨林を破壊し、地球の気候や生物多様性に悪影響を与える。HISは事業をやめるべきだ」と訴えた。

■調達先が確定していない?

西アフリカ原産のアブラヤシの実から精製したパーム油は、単位面積当たりの収量が菜種油や大豆油などと比べて多いことなどから現在、植物油脂の中で最も多く生産されている。マーガリンやスナック菓子などの食用のみならず、化粧品などの原料としても幅広く用いられている。インドネシアやマレーシアを中心として全世界での年間の生産規模は7000万トンに達し、そのうち約75万トンが日本に輸入されている。

HISはそのパーム油を、発電用燃料として用いようとしている。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)に基づき、発電した電力を高値で売れることに目をつけた。

現在、角田市内では、HIS子会社による発電所建設工事が2020年3月の完成に向けて急ピッチで進められている。7月初めに現地を訪れると、大型トラックなどの工事車両がひっきりなしに出入りしていた。だが、表向きの工事の順調さとは裏腹に、不透明感が強まっている。

6月の角田市議会での日下七郎市議の質問に対して、大友喜助・角田市長から注目すべき発言があった。「(HISに確認したところ)認証パーム油の調達先などについては確定しておらず、現在調整中だ」(大友市長)。

HISが取材に応じないため詳細は明らかでないが、パーム油調達の見通しが立たないまま、建設工事が先行している可能性が高い。

HISの子会社は3月に国際的なパーム油の認証団体「RSPO」(持続可能なパーム油のための円卓会議)の正会員になり、RSPOの認証を受けたパーム油調達を進めようとしている。経済産業省が設備稼働の条件として、RSPO認証の取得などを通じた、環境破壊を伴わない「持続可能性」の確認を義務付けているためだ。

HISの子会社が計画している発電所の出力は4万1000キロワット。そこから計算すると、燃料として調達が必要なパーム油の量は年間約7万~8万トン程度と見られる。HISはそれに見合うRSPO認証油を確保しなければ発電所を稼働させることはできない。しかし、そのハードルはきわめて高いと見られている。

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