谷中のお寺が「幽霊イベント」を開催するワケ 漫画をきっかけに落語の人気が高まっている

東洋経済オンライン / 2019年8月23日 8時10分

幽霊とマンガと落語をコラボしたイベントを主催した、谷中にある臨済宗国泰寺派の全生庵。全生庵は幕末の無血開城に尽力し、後に明治天皇の侍従を務めた山岡鉄舟が1883(明治16)年、建立した寺院。鉄舟のほか、同時期に活躍した落語家の三遊亭圓朝も眠る(筆者撮影)

■幽霊×マンガ×落語のコラボイベント

幽霊とマンガと落語をコラボしたイベントが8月3日、都内のお寺にて開催された。

イベントを主催したのは谷中にある臨済宗国泰寺派の全生庵。同寺では、所有する50幅に及ぶ幽霊画を、毎年8月の1カ月間一般公開している。

同寺に眠る落語家・三遊亭圓朝の命日にちなんだ「圓朝忌」の一環として行っているものだが、暑さが極まるこの時期、背筋がヒヤリとするような体験で涼を呼ぶとともに、一般の人にお寺に親しんでもらう狙いもあるのかもしれない。

圓朝生誕180年にあたる今年は初の企画として、人気漫画家の雲田はるこ氏、落語家の金原亭馬玉氏を招いてのトークセッション、馬玉氏による落語公演を組み合わせたイベントを開催。

イベント開催日の8月3日には、女性を中心とした、およそ120人が同寺の会場を満たした。

雲田氏による漫画「昭和元禄落語心中」は、落語家を目指す前科一犯の若者が主人公。師匠である「八雲」の青春とともに、戦前から戦後、現代にかけての落語の変遷を描く。未来に向け、成長し続ける文化としての落語への期待も感じられる作品である。

若い女性だけでなく幅広い読者の支持を受け、アニメ化、ドラマ化などと相まって、落語人気の高まりのきっかけの1つともなった。講談社漫画賞一般部門、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、手塚治虫文化賞新生賞など輝かしい受賞歴を持つ。

同作品の重要なモチーフとなっているのが、圓朝創作による落語の1つ「死神」だ。落語には幽霊が出てくる作品はよくあるが、その多くはあまり怖くない。

しかし「死神」に関しては、話し方によっては寒気のするような怖さがある。作品に主人公の師匠として登場する「八雲」の十八番が「死神」で、八雲はどちらかと言えば、恐ろしく語るタイプ。

圓朝はこの作品のほかにも、「牡丹灯籠」「真景累ヶ淵」といった怖い怪談話を創作した「落語中興の祖」だ。

ユニークな経歴を持つ人物でもある。まず、落語家としての道に進む前は、猫好き絵師としても知られる、歌川国芳の下で修行したことがある。また幕末の無血開城に尽力し、後に明治天皇の侍従を務めた山岡鉄舟に弟子として仕え、禅を学んだ。

■所蔵品の中には、圓朝の筆によるどくろの画も

そして、全生庵が所蔵する幽霊画を集めたのも圓朝だ。寺が所有するのは圓朝収集による幽霊画のおよそ半数。所蔵品の中には、圓朝の筆によるどくろの画も存在する。

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