日本人が知らない「トランプ大統領」の頭の中 大事なのはアメリカよりも「自分の損得」

東洋経済オンライン / 2019年9月10日 8時20分

iPhoneを中国で製造する鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)は、成都で100万人の労働者を雇用している。それだけの頭数をそろえないと、アップルのオーダーに対応できないからだ。では、すでに完全雇用状態のアメリカでこれだけの工場労働者を集められるかといえば、無理な話である。

中国が為替操作で通貨安に誘導しているためアメリカの輸出競争力が落ち、アメリカ人労働者が割を食っているとトランプ大統領は主張するがこれに根拠はない。これを言っているのは、トランプ大統領の経済アドバイザーを務めるカリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナヴァロ教授だが、彼が根拠としている製造業を前提とした経済モデルが古すぎるのだ。

確かに、トランプ氏を支持するラストベルトの失業率は相当高いが、失業者の多くがアルコール中毒や麻薬中毒により雇用不能といった状況で、いくら中国を締めつけても、戦う以前に戦闘不能なのである。

その一方で、H‐1ビザの発給要件厳格化によりハイテク人材が圧倒的に不足し、賃金の高騰で労働者の二極化に歯止めがかからなくなっている。

■世界的な問題のワーキングプア

働いているのに給料の額が全労働者の平均所得の60%に満たない人のことをワーキングプアというが、このワーキングプアはいまや世界的な問題である。

フランスでは2018年11月に、マクロン政権の燃料増税に反対する大規模デモが起こった。このデモは「黄色いベスト運動」と名づけられ、その後も続いている。デモの中心となっているのは、ワーキングプアの人たちだ。彼らの多くは公共交通機関が発達したパリのような街には住んでいない。公共交通機関が発達していない地方で暮らし、職場まで燃料代の安いディーゼル車で通っている。だから、ディーゼル燃料の値上げは彼らにとって死活問題なのである。ところが、マクロン大統領のようなエリートにはこの状況がわからないのだ。

アメリカのワーキングプアは、トランプ大統領は自分たちの味方だと思っているから支持しているが、実際には、トランプ大統領が就任以降ワーキングプアのために行った政策など1つもないのである。

トランプ大統領に関しては、ウォーターゲート事件を暴いたことで知られる著名なジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が2018年9月に出版した『Fear: Trump in the White House(邦題:恐怖の男〜トランプ政権の真実)』で、彼がいかにうそつきで無能かということを洗いざらい暴露している。

ここにきてトランプ大統領の支持率が落ちているという声も耳にするようになったが、ようやくワーキングプアの人たちも目が覚めてきたのかもしれない。

大前 研一:ビジネス・ブレークスルー大学学長

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