テリー・ゴウが台湾のトランプになり損ねた訳 「常勝将軍」を撤退に追い込んだ2つの可能性

東洋経済オンライン / 2019年9月26日 8時40分

6月の株主総会でホンハイの会長職を退任した郭台銘氏。総統選に出るはずが、なぜ出馬を断念したのか(写真:AP/アフロ)

大山鳴動して鼠一匹、といっていいのだろうか。2020年1月の台湾総統選へ向け、混戦に陥っている台湾政治。今年4月に立候補を表明して以来、その話題の中心であり続けた鴻海精密工業(ホンハイ)創業者、テリー・ゴウ(郭台銘)氏が、9月16日、とうとう総統選への出馬を諦める決断をした。

声明文が発せられた夜11時という時間も異例だった。翌日は、署名による無所属の総統選立候補の締め切りの日だった。13日には、名誉党員であった国民党からの離党を表明したことで、17日には立候補会見をするものと、誰もが想像していただけに、大きなショックが広がった。

■経営者から政治家への転身に「失敗」

郭台銘氏は、電子部品製造受託(EMS)企業のホンハイを立ち上げ、一代で零細企業から売上高ベースで10兆円を超える大企業にまで成長させた伝説の経営者だ。

アップルなど世界の有力企業から軒並み注文を取り付け、シャープの買収にも成功。その豪快な経営手腕から「台湾のチンギスハン」とも呼ばれたが、経営者から政治家への転身で「台湾のトランプ」にはなれなかった。

もとより政党政治家ではない郭台銘氏には、選挙で働く「手足」がなかった。国民党の党内予備選で敗れて組織に頼れなくなった郭台銘氏には、ほかの協力相手が必要だった。そこへ助けの手を伸ばしたのは台北市長の柯文哲氏と国民党の元立法院長・王金平氏という2人の大物だった。

庶民派で人気者の柯文哲氏は「次の次」である2024年の総統選に野心を持っている。まずは自らの政党・台湾民衆党を設立し、郭台銘氏の知名度や資金力を得ながら、5~10人程度の立法委員を当選させれば、将来につながるという思惑があった。

王金平氏も国民党の主流から外れているが、中南部の地方派閥に隠然たる影響力があり、経済界に強い郭台銘氏とは補完関係にある。それぞれ個性を生かす郭台銘、柯文哲、王金平の三者同盟が成ったかに見えた。

出馬断念前の世論調査では、もし郭台銘氏が出馬した場合、支持率は、民進党の公認候補で現職総統の蔡英文氏にこそ数ポイントは及ばないが、国民党の公認候補・韓国瑜氏(高雄市長)より上というデータが出ていた。

■直前まで出馬を迷った2つの理由

国民党、民進党の二大政党の両方の中で、蔡英文氏あるいは韓国瑜氏に満足できない人々をひきつけ、さらに両政党に批判的な中間層の票も集めることができた。本腰を入れて選挙戦を展開すれば、それなりに善戦しそうな見通しもあったのだ。

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