最低賃金引き上げ「よくある誤解」をぶった斬る アトキンソン氏「徹底的にエビデンスを見よ」

東洋経済オンライン / 2019年10月9日 7時10分

また、人口が増加している国にとっては、将来の雇用への影響を懸念することも重要ですが、日本では今後人口が減少するので、事情が違うことも忘れるべきではありません。

疑問2:イギリスで最低賃金引き上げが成功したというデータは、各国の最新の研究で否定されているのでは?

この指摘をしてきたコメントには、「ここ1~2年の研究では抽出方法の改良が進み、イギリスでの最低賃金引き上げの影響が肯定的であるという説は否定され、アメリカ、スペイン、フランス、ドイツの直近の経済学者の研究では、失業の増加をもたらすと確認された。韓国は研究の結果を待つまでもない」とあります。

これが本当なら一大事ですので、一生懸命、学会に発表された論文を探しましたが、このような結論を展開している論文を見つけることはできませんでした。いったい、どの論文をご覧になられたのか、教えていただきたいものです。少なくとも、確認できる論文の中で特殊な例であることは間違いありません。

イギリスはLow Pay Commission(低賃金委員会)が徹底的な分析に基づいて、政府に対して提言する仕組みを設けています。この低賃金委員会が2019年4月2日に発表した286ページにも及ぶ報告書には、以下のように記載されています。

Rather than destroy jobs, as was originally predicted, we now have record employment rates.(当初は雇用破壊が危惧されていたが、就業率は過去最高を記録している)

The overwhelming weight of evidence tells us that the minimum wage has achieved its aims of raising pay for the lowest paid without harming their job prospects.(最低賃金は、低所得者の雇用を破壊することなく彼らの賃金を高めるという目的を達成した。これには圧倒的な証拠が存在する)

直近のデータでは、イギリスの労働参加率は76.1%という記録を更新して、失業率も3.9%と、1974年以降の最低水準にあります。

最低賃金を引き上げても失業率が上がらないことは、このデータで証明されています。ですから失業率が上がると主張するならば、このイギリスの事実を否定することになりますが、厳然たる事実を否定することなど可能なのでしょうか。

■むしろ「イギリスの特殊性」から学ぶべき

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