映画「蜜蜂と遠雷」はここまで音響にこだわった ピアノコンクール描く作品に技術の粋集める

東洋経済オンライン / 2019年10月10日 10時0分

国際ピアノコンクールを舞台に、世界を目指す若き4人のピアニストたちの挑戦を描いた映画『蜜蜂と遠雷』は録音にはかなりこだわって撮影されたという ©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

「第156回直木賞」と「2017年本屋大賞」のダブル受賞という史上初の快挙を達成し、累計発行部数134万部を突破した恩田陸の小説『蜜蜂と遠雷』が松岡茉優主演で実写映画化され、10月4日より全国公開されている。

国際ピアノコンクールを舞台に、世界を目指す若き4人のピアニストたちの挑戦を描いた本作。作者の恩田陸が「そもそも、この小説は絶対に小説でなければできないことをやろうと決心して書き始めたもの」と語るとおり、「映像化は不可能」と呼ばれてきた作品だ。

そんな原作小説の映画化に果敢に挑んだのは、ポーランド国立ウッチ映画大学で映画を学び、妻夫木聡主演の映画『愚行録』で注目を集めた新鋭・石川慶監督だ。

■原作小説は「文字から音が聴こえてくる」作品

原作小説は、“文字から音が聴こえてくる”とまで言われる圧倒的な音楽描写が特徴。それだけに石川監督自身、「ほかの作品と違い、この作品は音楽演奏の部分が失敗したら絶対に成立しない」と感じていたという。

それゆえ本作においてはまず、シナリオが完成する前に音楽のレコーディングを始めることになった。一般的な映画では、映像を撮影してから音楽を発注することが多いが、本作では、まさに逆のプロセスで制作されたというわけだ。それゆえに「音楽が先に出来上がっていたので、その音を基に脚本や役者の演技に還元することができた」(石川監督)という。

本作の音楽レコーディングは、初台にある東京オペラシティ コンサートホールで行われた。「このときは音を録るだけなので、客席はわれわれだけ。ものすごくぜいたくなコンサートを特等席で観たような感じでしたね」と、振り返る石川監督。

役者陣も実際にその収録風景を見学し、役作りに生かしたという。そして映画用の音楽ということで、通常の映画撮影の録音とも違う、コンサート音響の音楽収録とも違う、両者をミックスしたような複雑な音楽収録が行われた。

通常の映画の場合、マイクをバランスよく配置して録音し、その音をバランスよくミックスダウンするという作業工程になるが、本作の場合、マイクを多めに用意して、楽器ごとに個別の音を録ったという。録音スタッフも、映画畑の録音スタッフのほかに、クラシック音楽の録音を専門とするスタッフも参加。混合部隊で収録は行われた。

「この映画ではピアノの音、弦楽器の音など、楽器ごとに音を個別に録っておいて、後でバランスを変えられるようにしました。というのも、映画の中ではカメラが動くのに、鳴っている音楽は、バランスのとれた音だけを聴くことになるのはやはりおかしいんじゃないかという話になったからです。

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