ギリシャが危機でも医療の質を維持できたわけ 財政危機から10年、その日本財政への教訓

東洋経済オンライン / 2019年10月15日 7時0分

2011年2月、ギリシャの財政改革に抗議する医療従事者ら(写真:ロイター/アフロ)

2009年10月4日。ギリシャで行われた総選挙の結果、政権交代が起こり、左派のパパンドレウ政権が誕生した。新政権が発足してすぐ、前政権が財政赤字を過少に報告していたという事実を公表した。

その結果、ギリシャの統計や債務返済能力に対する不信感が高まり、ギリシャ財政危機の引き金となった。あれから10年が経った。

■緊縮財政でギリシャの医療の質は低下したのか

国債発行が困難になって資金繰りに窮したギリシャ政府は、欧州連合(EU)やヨーロッパ中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3者(トロイカ)から金融支援を受け、財政破綻に陥るのをしのいだ。しかし、トロイカは、支援した資金がきちんと返済されることを確約するようギリシャ政府に求めた。つまり、増税や歳出削減といった緊縮財政策を求めたのだ。

トロイカは、付加価値税(日本でいう消費税)の増税はもとより、公務員給与や年金給付の大幅カットをはじめとする政府支出の削減を求めた。ギリシャが破綻を避けるためにはトロイカからの金融支援が必要だが、それとセットで緊縮財政策受け入れを迫られた。これを国民投票にかけようと提案したが、EU側から阻止され、パパンドレウ首相は辞任した。

後継政権は連立政権で政権基盤が弱かったが、金融支援を受ける代わりに緊縮財政策を受け入れた。トロイカが求める緊縮財政策についてのギリシャ国民の評判は総じて悪い。増税だけでなく、国民生活に密接な関係のある年金給付や医療への政府支出もかなり削減されており、無理もない。

だが、財政危機後にギリシャの医療の質が低下したかというと、必ずしもそうではないようだ。

筆者は、10月初旬にギリシャへ赴き、財政危機後、ギリシャの医療にどんな影響があったのかを調査した。

世界各国で医療には、税金が大なり小なり投じられている。だから、財政危機と聞けば、高価な医薬品を使えず、治る病気も治せなくなったり、ベッド不足で入院待ちをする患者が列をなすなど、医療への税金の投入が減って大きな影響が及ぶと想像しがちだ。

ギリシャの入院医療は過半を公立病院が担っており、緊縮財政策は公立病院を直撃した。公立病院に勤務する医師や職員は公務員で、緊縮財政策によって給与が引き下げられたうえ、公務員数は5人の退職者に対して1人しか新規採用をしてはいけないというルールが適用されたため、医師が減ったという。そのため、ギリシャ人の医師の多くが、財政危機後に他の欧州諸国に渡った。

■財政危機が離島の医療体制を直撃

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング