ハンセン病隔離政策で苦しんだ「孤島・長島」の今 「人権の島」を生きた人々の数奇な人生

東洋経済オンライン / 2019年10月17日 8時10分

「私の立場から言えば、もっとも難しいことは『どのように後世に伝えていくのか』ということ。今の時代、読み物として読んでもなかなか多くの人に届かない。最も理解してもらえるのは直接見たり、聞いたりすること。そのきっかけを創出をすることが私たちの役目だと思うんです。

今、岡山・香川両県にある療養所3園の世界遺産登録を進める運動が進んでいます。世界遺産登録されることで、観光客の方が訪れ、多くの人にこの島の歴史を体感してほしい。私たちにとって、世界遺産は手段であって、目的ではないんです。無関心から、関心への1歩となることを願って活動しています」

■受け継がれる歴史

かつて新良田教室があった邑久高校では、その歴史を絶やさないための試みが実施されている。同高では総合学習の時間で展開している地域学の授業において、ハンセン病を包括的に学ぶ取り組みを2017年から開始した。授業を担当するのは田辺大蔵さん(60)だ。

現在では、同高の認知活動にも繋がっているが、その船出は厳しいものだったという。

「僕は邑久高校出身者でもなく、この町にゆかりもない人間なんですね。それで赴任後に、新良田教室の存在を知り、ハンセン病に関してもイチから勉強したんです。最初はね、腫れ物に触れるような雰囲気でした。先生方の中でも、新良田教室の存在を知らない人が大半。『なんでわざわざ昔のことを』というような空気も感じていました。授業の中身もまったくの白紙状態。1年間近くかけて土台作りをして、やっとスタートにこぎ着けました」

田辺氏の不安をよそに、生徒からの関心は予想に反して高かった。同学区では中学時代に人権の授業が組み込まれている学校もあり、「自分の住む地域の歴史を学びたい」という生徒が集まってきた。

今年からはネット上でもニュース配信を試みていき、発信の場を増やしていくという。教育・医療・看護・心理学・裁判・文学そして地域学。多角的な視点でカリキュラムを組んでいる田辺氏だが、最も重視しているのは人との関わり方だそうだ。

「この地域でもハンセン病に関して1人ひとりの温度の差、意識の差というものはあります。

人と接することで頭だけでなく体でも考えてもらい、生徒たちが大人になって、また違う世代にうまく伝えてほしい。幸いなことに、私の授業を受けた生徒たちは、看護職や地元での勤務を希望し、『将来この町に戻ってくる』と話してくれる生徒が大半なんです」

■紡がれる思い

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