映画「楽園」は事件で残された人を描いた作品だ 瀬々敬久監督が吉田修一の犯罪小説に挑む

東洋経済オンライン / 2019年10月19日 10時0分

彼女に希望を託したかったということはありますよね。でも一方で、綾野剛さんや、佐藤浩市さんが演じていたような、追い詰められていく人たちにとっては、皮肉なタイトルにしか見えないのかもしれません。

■『楽園』は追い詰められた人には皮肉なタイトル

――映画のタイトルを『楽園』にします、と吉田さんに報告した際のリアクションはどうだったのでしょうか。

実はタイトルを決めるような会議があり、その時に吉田さんも参加されていました。なかなかいいタイトルが見つからなかったのですが、『楽園』はどうですかと吉田さんに提案した時に、「気持ちはよくわかります。ただ既視感が若干あります」とおっしゃっていました。

というのも吉田さんの短編の中に、ほかの「楽園」というのがあるんですよ。それから小説で「楽園」と検索すると、宮部みゆきさんの作品が上位に出てくる。そういう意味では、よく使われているタイトルになります。しかし、『犯罪小説集』を映画化するに当たっては、何か映画化への思いみたいなものは伝わるタイトルだ、ということはおっしゃっていただきました。

――吉田さんとのやり取りはけっこうあったのでしょうか。

けっこうありましたね。プロットの段階から見せて、話をしたりとか、脚本の段階で話をしたりとか。いろいろありましたよ。ただ、基本的には任せてもらえました。というのも、やはり2本の短編から1本の映画を作るということを、吉田さん自身、想像すらしていなかったと思うんですよね。

そのため、ある程度オリジナルな部分が出てくるのは仕方のないことでした。この映画は『犯罪小説集』という小説に対してのアンサーソングみたいな感じの映画になったと思っています。

ただ、映画化をするに当たっての吉田さんの思い、考えというのもいろいろと聞かせてもらった。そういう作業だったと思います。基本的に吉田さんは前向きな方というか、どうやったらよくなるかということを考えてくださる方なので、そういう意味では面白かったですね。

吉田さんもどうなるかわからない思いがあったかもしれませんが、作品を見て安心されたのではと思っています。

――犯罪を描くとしてもいろいろな描き方があると思います。例えば犯罪者側から描くこともできますし、捜査をする側からも描くことができると思います。そういう意味で、今回は犯罪に近い立場の人を描いた作品になるかと思いますが、こういう見せ方をしようと気を使ったところはありますでしょうか。

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