「中小企業を守る」目先の利益が日本を滅ぼす 「災害、人口減少、社会保障」大局的な政策を

東洋経済オンライン / 2019年10月23日 7時30分

「中小企業を守る」は、一見「庶民に優しい」政策に見えますが……(撮影:梅谷秀司)

オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。

退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、日本に必要なのは「生産性の向上」だとしたうえで、『日本人の勝算』(東洋経済新報社)や『国運の分岐点』(講談社+α新書)で「最低賃金の引き上げ」「中小企業の合併統合」を主張している。

なぜ生産性を高めなければならないのか。なぜこれらの政策が生産性向上に必要なのか。改めて解説してもらった。

■日本には「大局的な視点」が欠けている

今年OECDが発表した「Fiscal challenges and inclusive growth in ageing societies」では、今のままでは高齢化によって、G20の先進国の借金比率はGDPに対して現状より180%ポイント高まるとあります。政策を変えないと、格差がさらに拡大して、貧困率も大きく上昇するリスクがあるとあります。

日本は人口減少と高齢化の影響を最も受ける国です。生産性を上げていかないと、すでにアメリカに次いで高い日本人の貧困率は、さらに上昇します。

生産性を上げても、今までのように労働分配率が下がる一方では、貧困率は上がる一方です。だからこそ私は、政府が最低賃金を段階的に引き上げるべきだと論じてきました。

このような状況の下、日本の最低賃金をめぐる議論が、少しずつではありますが活発になってきている印象を受けます。

人口減少社会において、遅かれ早かれすべての日本国民が向き合わなくてはいけないこのテーマに関心が集まっているのは、大変喜ばしいことです。

だからこそ、最低賃金の引き上げに反対する一部の方たちから、あまりに冷静さを欠いた主張がなされていることが残念でなりません(このような主張への反論を本記事の最後にまとめて掲載しましたので、ぜひ最後までご覧ください)。

一方で、この現象のおかげで、日本の経済学の構造的な問題も見えてきました。

「大局的な視点の欠如」です。

日本の人口が減少していく以上、賃金が上がらないと個人消費総額が激減するというのは、中学生でもわかる理屈です。では、この減少を食い止めるにはどうすればいいかというと、生産性を高めて一人ひとりの所得水準を増やすことです。不思議なことに、人口減少は始まっているものの日本ほどではない欧州のほうが、なぜかこの生産性向上に対する理解が深いのです。

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