日本人が「国境なき医師団」で実は重宝される訳 作家のいとうせいこう氏に聞く

東洋経済オンライン / 2019年11月18日 17時0分

作家のいとうせいこう氏が見た「国境なき医師団」のリアルな活動風景とは(撮影:今井 康一)

崇高で立派で正直近づきがたい存在、と思ってはいないだろうか。著者も最初は“ぼんやりとした尊敬の念”だけだった。事の発端は「男用の日傘が欲しい!」とSNSで発したメッセージ。それが転じて、ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダ、南スーダンの現場取材へ。あまり知られていない組織やスタッフたちの姿を等身大でリポートする。『「国境なき医師団」になろう!』を書いた作家のいとうせいこう氏に詳しく聞いた。

■スタッフの半数は「非医療者」

──「国境なき医師団」(略称、MSF)とは、紛争地や被災地へ駆けつける医療関係者有志、くらいのイメージでした。

実はスタッフの半数がノンメディカル(非医療者)なんです。現地で活動するにはライフラインの確保、テント・タンク・浄水装置・食糧・毛布・車両・発電機等々が必要になる。インフラづくりや安全管理、裏方全般を担当するロジスティシャン、経理・人事担当のアドミニストレーター、チームをまとめるプロジェクト責任者など、実に多種多様なバックグラウンドの人が参加しているんです。

もう1つの特徴は徹底した独立性。活動資金の9割が個人からの寄付で、政府や製薬会社など企業からの援助は基本断る。何らかの協力を得ても企業名の表示など見返りはなし。あくまでも独立性を担保する。そこに患者を選ばない中立性、民族・宗教・政治的信条を分け隔てなく受け入れる公平性を加えた3点が確保できない場合は、撤退することもあるんです。

──崇高な方々、みたいな冷めた決めつけも間違っていたようです。

現地で働くスタッフは「毎晩ビール飲んで、愚痴言ってケンカしまくってる。そんな人間が集まって、何とかしようとしてるのが私たちなんです」って言うんです。不満があれば解決策を徹底的に話し合うから、気持ちが満足してる。「忙しいというストレス以外、ストレスがまったくない」って話す人もいた。もちろん悔しいこともたくさんあって、この赤ん坊はもう助からない、とギリギリの決断を迫られる。そうやって向き合っているんだなと思うと、一人ひとりがいとおしくなるというか。

──現在日本人登録者数は300人。多くはないですね。

日本にはまだ、国際協力の実務経験をキャリアとして捉える風潮がない。看護師さんもお医者さんも帰国すると新米からのやり直し。困難な地域で腕を磨いてきた彼らをちゃんと評価する体制になってないんです。欧州では彼らはリスペクトされてる。テロが起きれば、いちばん頼りになる存在でもあるし。日本人スタッフと飲んだりすると「正直そこはつらいんですよね」って。それでまた1人、優秀な人材が流出していく。

■日本人がいると場がギスギスしなくなる

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