「赤字国は怠け者で黒字国は勤勉」という大誤解 自由貿易体制の堅持には為替調整が必要だ

東洋経済オンライン / 2019年11月25日 8時20分

野村総合研究所 主席研究員のリチャード・クー氏(左)に、貿易の不均衡を是正するにはどうしたらよいか話を伺った(撮影:尾形文繁)

今年6月から連載を開始した「21世紀のシンクタンク・パワー」は、次回で一区切り。最後のゲストとして、日本屈指のシンクタンクである野村総合研究所に36年間在籍し、現在は主席研究員の職にあるエコノミスト、リチャード・クー氏をお迎えし、今回は対談前編をお届けする。

クー氏は「バランスシート不況」の経済理論の提唱者で、近年は、トランプ大統領の登場で自由貿易体制が不安定化する中、アジア主導の為替調整による自由貿易体制の維持を訴えた「アジアンプラザアコード」で世界的に注目されている。

船橋洋一(以下、船橋):クーさん、今日はありがとうございます。クーさんとは、プラザ合意の舞台裏を描いた『通貨烈烈』を出版した後、一緒に勉強会を開いていた頃からのご縁です。

リチャード・クー(以下、クー):本当にお久しぶりです。もう、10年ぐらい経ちますか。

船橋:いや、もっとです。ですが、クーさんの発表されたものはほとんど読んできました。最近も『インターナショナルエコノミー』の「アジアのプラザ合意」も読みました。アジア諸国の経常黒字とアメリカの経常赤字が続く限り、世界経済は安定しない。「プラザ合意」(1985年、G5蔵相・中央銀行総裁会議が合意した為替レート安定化に向けた協調政策の通称。ドル高でアメリカの貿易赤字が膨らんだ状況下、自由貿易を守るため、各国が協調しドル安を誘導する合意だった)のように大胆に為替をリアレンジメントしないと、安定は保てないという主張でした。

プラザ合意の時代はG5で、西側だけで完結する世界でしたが、今は中国やロシアも世界経済に強い影響力を持っています。その時代に、協調政策を実施することが可能でしょうか。

■貿易の不均衡は為替調整で解決できる

クー:そのアイディアを最初に提案したのは10年前です。そのとき、当時人民銀行総裁だった周小川さんに興味を持っていただいて、北京で3時間ほど議論しました。彼は、鄧小平が生きていたら、5分でこの提案に乗ると。

船橋:でも、今は鄧小平がいないし、鄧小平路線を否定するような政権になっていますよね。

クー:だから、集団指導体制の中で決定しなきゃならないけれど、日本から出てきたアイデアに乗るのは難しいと。そういう話で終わってしまいました。

けれど、10年前より事態は深刻です。とくに、昨今のアメリカの動きを見ていると、われわれが自由貿易について学んできたこと、その教科書的な理解に問題があるのだと痛感しています。

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