インフル「耐性」を極度に恐れる必要はない理由 1回服用で済む薬「ゾフルーザ」への期待と懸念

東洋経済オンライン / 2019年12月6日 17時40分

警戒はもちろん必要ですが、冷静な議論も求められています(写真:topic_kong/PIXTA)

12月に入り、寒さが増してきた。この季節、警戒したいのがインフルエンザだ。重篤な感染症であり、乳幼児や高齢者がかかると、時に命を落とすこともある。

■「ゾフルーザ」の耐性化が大きなニュースに

幸いなことに、インフルエンザには治療薬がある。代表例がタミフル。そして昨年、塩野義製薬が開発した「ゾフルーザ」が発売された。効果はタミフルとほぼ同等だが、内服が1回だけでいいというのが大きな特徴だ。1日2回5日間の内服が必要なタミフルと比べると、はるかに便利だ。発売初年の2018年度には、予想の2倍にあたる263億円を売り上げた。

最近、ゾフルーザに関する興味深い研究成果が公表された。11月25日に東京大学医科学研究所の河岡義裕教授たちが『ネイチャー・バイオテクノロジー』に発表した論文だ。この研究では、ゾフルーザが投与された38人の患者を対象に投与前後でタミフル耐性遺伝子の有無を調べた。

結果は衝撃的だった。服用前に耐性ウイルスを検出された患者はいなかったが、服用後のサンプルでは9人から検出されたのだ。とくに小児では耐性化の頻度が高かった。15歳以下では27人中8人だ。16歳以上の11人中1人を大きく上回る。小児ではたった1錠投与で約3割の患者で耐性化したことになる。

さらに、この38人には含まれないが、ゾフルーザを服用していない2人の患者からも耐性ウイルスが検出された。1人は1週間前に家族がインフルエンザにかかり、ゾフルーザを内服していた。耐性ウイルスが家族内で拡まった可能性が高い。ゾフルーザは容易に耐性化する。濫用すれば、せっかくの新薬が効かなくなってしまいそうだ。

実は、このことは治験の段階から指摘されていた。2018年9月にアメリカの医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載された第3相試験の結果では、耐性化率は9.7%だった。河岡教授たちの報告は、先行研究とも一致する。

ゾフルーザの耐性化がここまで大きなニュースになるのは、ゾフルーザへの関心が高いからだ。医療界はゾフルーザに大きな期待を寄せている。それはタミフルなどの従来のインフルエンザ治療薬とは作用機序が違うからだ。

Weblio辞書から引用すると作用機序とは「薬物が生体に何らかの効果を及ぼす仕組み、メカニズムなどを意味する」。昨年10月、米食品医薬品局(FDA)のスコット・ゴットリーブ長官(当時)は、「FDAとしては新しいメカニズムで作用するインフルエンザ治療薬を約20年ぶりに承認した」とコメントしている。

■ゾフルーザに対する懸念は払拭できるのか

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング