金がないから「親の遺体を放置」が通用しない訳 「最低限の葬儀費用」は行政が負担してくれる

東洋経済オンライン / 2020年1月14日 18時0分

「葬儀する金がなかったから遺体を放置した」とよく報道されますが(写真:Ushico/PIXTA)

昨年10月、同居していた母親が亡くなったにもかかわらず、自宅の布団の上に放置し続けたという理由で、埼玉県に住む52歳の男性が逮捕されました。

自宅で家族が死亡した場合、同居する家族には埋葬の義務があるため、遺体を死亡時の状態のまま放置すると死体遺棄で罰せられます。産経新聞の報道によれば、逮捕された男性は「葬儀する金がなかったから放置した」と供述しているそうです。

「葬儀をする金がなかったので親の遺体を放置した」という報道は10年くらい前から目立ち始め、最近では珍しくなくなりました。こうした報道がなされるたび、ネットを中心に「貧乏だと葬儀さえできないのか」「葬儀屋が儲けすぎだから、事件が起きるんだ」など批判的な意見が飛び交います。ですが、これらの意見の多くは誤った認識です。

■葬儀費用は行政が負担してくれる

結論から申し上げると、お金がまったくない人でも葬儀を行えます。というのも、日本にはお金がない人の代わりに、行政が葬儀費用を負担する「葬祭扶助」という制度があるからです。

例えば、生活保護を受けている人が亡くなった場合、生活保護法に基づいて行政が葬儀費用を負担します。この場合、生前に面倒を見ていたケースワーカーが手続きを進めてくれます。

また、身寄りもお金もなく、さらに生活保護を受けていない人でも、葬祭扶助を申請してくれる友人や知人などがいれば、生活保護法に基づいて葬儀費用が支給されます。申請する人がいない場合でも、葬儀費用は地方自治体が負担する仕組みになっています。

つまり亡くなった人の置かれた状況によって仕組みは異なりますが、支払い能力がないとさえ確認されれば、日本では最終的には行政が葬儀費用を負担してくれるのです。

支払われる金額はエリアによって異なります。東京23区の場合、最高額で20万9000円まで支給されます。実際は葬祭扶助の認定まで日数がかかることもあるため、遺体を保全する費用が別途支払われることが多いです。

とはいえこの予算では、場所を借りてお坊さんを呼んでお経をあげるというのは不可能です。葬祭扶助は直葬(通夜などの儀式などを行わず、納棺後にすぐ火葬する形式)を前提にしています。

日本では行政が葬儀費用を負担してくれるにもかかわらず、なぜ遺体放置が絶えないのでしょうか。

考えられるのは、遺体を放置していた人に別の意図があった場合です。こうした事件の記事をよく読むと、「生前から故人に暴行をふるっていた」とか「故人の年金を不正に受給していた」などと書かれているケースがあります。お金がどうこうというのは苦し紛れのうそであって、不法行為の隠蔽が本当の目的だったのかもしれません。また、事件の背景を探らず、「葬儀をするお金がなかったから遺体放置」という見出しを多用するマスコミにも問題があると思います。

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