「息子の様子が変」マトリに駆け込んだ母の苦悩 覚醒剤乱用者の症状が「最近の息子と似てる」

東洋経済オンライン / 2020年1月17日 7時25分

薬物はネットの普及により誰でも入手できるようになり、薬物犯罪の脅威が増しているという(写真:Satoshi KOHNO/PIXTA)

2019年はピエール瀧や沢尻エリカなど、有名人、芸能人が薬物所持や使用で逮捕された。こうした事件を受けて、薬物の恐ろしさが伝わることはいいことなのだが、一方で、これらが「セレブ」たちの遊びにすぎない、といった間違った認識が広まることは歓迎できない。

ネットの普及により、薬物はより普通の人、普通の子どもにも身近な存在となっている。しかも、ネットはいまだ進化・拡大の途上にあり、薬物犯罪1つ捉えても今後、ますます脅威が増すことは疑いようがない。

われわれ麻薬取締官(通称:マトリ)が、こうしたネット犯罪と真剣に向き合うようになったのは1996年頃である。ネットを媒介とした薬物事犯が、水面下で徐々に広がりを見せ始めた時期だ。拙著『マトリ 厚労省麻薬取締官』の中から、印象深い事例を紹介しよう。

■マトリに相談に来た母親

事件は大学2年生の息子Wを持つ母親の相談から始まった。地域の集まりで、麻薬取締官による薬物乱用防止講話をたまたま聞いた彼女。そこで耳にした覚醒剤乱用者の症状が、「最近の息子の言動と似ている」と感じたらしい。

彼女の息子は幼少期から優等生で、補導歴などもいっさいない。それでも、どこかスッキリとしない思いを抱えていた彼女は、息子が薬物と無縁であることを証明したい一心でマトリの門をたたいた。

具体的な相談内容は以下のようなものだった。

「このところ、1人息子の様子がおかしいんです。もともとは勉強が好きな穏やかな性格で、友人もまじめな子ばかり。クラブやサークルには入っていないし、不良仲間とつるんでいる様子もありません。それなのに、ここ半年は大学に登校した気配もない。以前は同級生の恋人が訪ねてきましたが、最近はまったく顔を見せません」

息子Wの趣味はテレビゲームとパソコンくらいで、外出も駅前のパソコンショップとレンタルビデオ店に出かける程度。反抗期もほとんどなく、手のかからないとても「いい子」で、大学(有名私大)にも苦労せず現役で合格している。しかし、

「半年ほど前から部屋にこもりがちで、最近は食事もまともに摂らなくなった。夜はほとんど眠らないようで朝方までパソコンと向き合っています。家庭での会話らしい会話はありませんが、時折、饒舌になって汚らしい言葉を吐き捨てたりと、とにかく気分の変化が激しい。

あとは、お金を1万円、2万円と際限なく要求してくる。家庭教師のアルバイトでお金を貯金してきたはずなので、“いったい何に使うの?”と尋ねると“ネットで本を買う”とか“友達に借りたお金を返す”とかいう要領を得ない返事ばかり。“お金を盗まれた。いや、落とした”と混乱しながら平然とウソをつくこともある。お金を渡さないと大声を上げて物に当たるので、ここ2~3カ月はとても手を焼いているんです」

■診療内科に連れて行ったものの…

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