コロナで露呈「習近平vs.中国人」の危うい構造 「アメリカに謝ろう運動」を呼びかける声も

東洋経済オンライン / 2020年4月2日 7時40分

中国当局と中国市民の間で密かに攻防が幕を開けたという=写真は3月8日の北京市街(筆者撮影)

新型コロナウイルスの蔓延に直面し、ある著名な人権活動家は、「(中国当局は)天安門事件以来の空前の社会不安と認識している」と指摘した。厳しい行動制限など国民の誰もが自国発の感染症の影響を受ける中、中国当局と市民の攻防が密かに幕を開けた。今、中国で何が起きているのか――。『習近平vs.中国人』の著者である宮崎紀秀氏に解説してもらった。

■「アメリカに謝ろう」運動の始まり

「最大の過ちは、中国共産党に嘘をつくのを許し、私たちがそれに反対の立場を表明しなかったことです」

カメラを見て英語で話す若い女性。水色のマスクで顔の半分は覆われているが、2つに結った髪と意志の強そうな瞳の色から東洋人であろうと想像がつく。

「私は中国人です。だから、中国人と政府がやった悪いことのすべてに責任があります」

この映像がツイッターで出回り始めたのは3月20日頃。女性は海外に住む華僑とされる。話の内容から居住地はアメリカと思われる。

中国はその頃、初期の急激な感染拡大が一段落し、新型コロナウイルスを国内と国外で拡散させた責任をあいまいにするかのような宣伝を繰り返していた。ニュースでは、新たな感染確認者は、国内では抑えられたが、海外から流入が続いているなどといった状況が連日強調された。中国外務省の現役報道官である趙立堅氏は、ウイルスの発生源について「アメリカ軍が武漢に持ち込んだかもしれない」などと英語でツイートした。

冒頭の女性は、ツイートした1分50秒程の映像の中で「アメリカに謝ろう」運動(#saysrytoAmerica)を始めようと呼びかけていた。

「中国ウイルスをアメリカに持ち込んだことを謝りたい」

中国ウイルス(Chinese virus)とは、新型コロナウイルスのことで、アメリカのトランプ大統領が使って、中国を激怒させた言い方だ。

彼女は、中国外務省の報道官の“主張”にも、真っ向から反対している。

「ウィーチャット(=中国のSNS)でデマを拡散させたことについて謝りたい。アメリカ軍が武漢にウイルスを持ち込んだという話は誤りです」

ツイッターには、彼女の言葉を繰り返す中国人とみられる若者たちが続いた。

中国政府が、原因不明の肺炎患者から新型コロナウイルスが検出されたと正式に認めたのは1月9日だった。しかし、人々を救おうといち早く警鐘を鳴らしたのは中国当局ではなかった。市民だった。

感染の「震源地」、湖北省武漢にある武漢市中心医院の李文亮医師(享年34歳)はその1人である。李医師は、まだ中国政府が新型コロナウイルスによる肺炎の発生を公式に認めていなかった去年12月30日の段階で、「市場で7人のSARS(重症急性呼吸器症候群)感染が確認された」などの情報を、グループチャットに発信した。同僚の医師たちに防疫措置を採るよう注意喚起するのが目的だった。

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